原題は UTOPIA IS CREEPY and Other Provocations
原題と同じ「薄気味悪いユートピア」という記事が、158頁にあります。
ユートピアが気味悪く見える理由：
「多分、ユートピアがその住人に、この堕落した現実社会を悩ます恐怖や怒り、
嫉妬や失望、苦痛、その他いかなる厄介な感情をも決して表さず、感じさえしない
ロボットのようにふるまうことを要求するから」。
著者は、本書の中で次のように警告していると感じました。がんばろう。
ウェブ社会が美しいユートピアのようになることを夢見てはいけない。
人間は、感情の無い（無いようにふるまう）ロボットになってはいけない。
人間は、不安を感じつつも、厄介な感情を制御しながら安定した行動を
とっていく必要がある。政治的にも、経済的にも、絶望することなく。
本書には、
2005年の著者のブログ記事に始まり、
2016年の著者の書き下ろし記事までが、時系列にならべられています。
ここ10年で、めまぐるしく移り変わってきた「インターネットの年代記」
になっています。（「訳者あとがき）より）。
本書の記事には、著者の鋭い洞察力があふれ出していて、感心しました。
特に、423頁の「スナップチャット候補者」（2015年）という記事を読むと、
トランプ大統領の出現を「予見」していたか、のようです。
「トランプは、オンライン上の議論を制する最善の方法は
情報を提供するのではなく、挑発することだとわかっているのだ」。
「いま重要なのは、イメージよりもむしろ個性だと言える。だが、
トランプ現象が示しているように、機能するのはある特定の個性
（スナップチャット的個性）である」。
「いまは冷静な理論家より熱しやすいポピュリストのほうが魅力的で、
人を引きつけるようだ」。
「有権者も、マスメディアも、候補者も、ソーシャルメディアの時代に
国政選挙がどのように展開するかを学ぶことになる」。
トランプ大統領が出現した今、（ソーシャルメディア時代の国政選挙に
予想もしなかった変化が現実化したことを目撃した今）、著者の洞察が
的中したことを感じました。
本書の結論。
・コンピュータは人間を補完してくれるパートナーと考えるべき。
・バーチャル化された未来の道をたどりつつも、形ある物体
（永続的価値のあるモノ）がこの世界に必ず存在するよう努める必要がある。
将来、電子マネーやビットコインの時代になっても、どこかに金という「金属」が
存在するよう努めることが重要で、マネーの物的価値での裏付けが永続している
必要がある、と著者は本書で提言していると感じました。
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