サルの話は一部分で、それ以外の各種生物の地理的拡散・進化についても、プレートテクトニクスを絡めて解説する本です。もちろん、各種の生物が拡散した研究があるからこそ、その1事例である、サルの「大西洋渡り」の信ぴょう性が高まるわけです。
サルが浮き草のイカダに乗って大洋を渡った仮説に、この本が、途中の島々が今よりもっと多かった可能性を付け加えているのは、とても面白いです。海を渡った陸上生物は、人類だけではないのです! ところで、長い航海の間、サルたちは何を食べていたのでしょうか。
とはいえ、早期にメインの大陸から分離されたニュージーランドのトカゲは特別に進化したと、この本は誇らしく書きますが、火を吐くようになったわけではなく、一般にはそう面白くないでしょう。サルも、大西洋を渡った新世界ザルの方が勇気と能力がありそうなのに、ヒトのレベルには進化しなかった。
ただ、自分が好きな生物の拡散・進化・多様化になると、たしかに魅力的でワクワクする話です。私はサルよりも、ネコが好きなので、世界各地に大小さまざま、各種の姿かたちのネコ科動物が分布するのは、不思議で魅惑的だと思います。ネコ科の祖先(ミアキス)の登場は新生代中頃とされ、大陸はもう分離していたのに、世界に広がったのは偉いものです。
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サルは大西洋を渡った 単行本 – 2017/11/11
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「ありそうもない、稀有な、不可思議な、奇跡的な」ルーツこそが本物だった。
植物や、翅のない昆虫、塩水に弱い両生類やサルなど、“海越えができない"
はずの生きものたちが、大海原を渡って分布を広げた歴史が明らかになりつつある。
地理的な障壁によって生物の分布域が分断されてきたとする「分断分布」偏重の
パラダイムに、変革が起き始めていると著者は指摘する。新たに浮上してきたのは、
動植物があちらの陸塊からこちらの陸塊へと奇跡の航海を遂げた、躍動感とサプライズ
に満ちた自然史である。
歴史生物地理学の世界を覗き込めば、多彩な生きものたちの姿はもちろん、
プレートテクトニクスや気候変動、化石記録に分子時計といった幅広い知見がひしめき
合っている。個性豊かな研究者たちが、生物の来歴をめぐって激しく論争した経緯も、
本書は臨場感たっぷりに映しとっている。
第III部では、読み進むにつれてますます「ありそうもない度合い」の高い海越え
の事例が登場するので、その頂点までどうかお見逃しなく。それらはいずれも、
著者が最後に語る「私たちの世界は、なぜ今このような姿をしているのか?」という
大きな描像の大切なピースなのだ。
植物や、翅のない昆虫、塩水に弱い両生類やサルなど、“海越えができない"
はずの生きものたちが、大海原を渡って分布を広げた歴史が明らかになりつつある。
地理的な障壁によって生物の分布域が分断されてきたとする「分断分布」偏重の
パラダイムに、変革が起き始めていると著者は指摘する。新たに浮上してきたのは、
動植物があちらの陸塊からこちらの陸塊へと奇跡の航海を遂げた、躍動感とサプライズ
に満ちた自然史である。
歴史生物地理学の世界を覗き込めば、多彩な生きものたちの姿はもちろん、
プレートテクトニクスや気候変動、化石記録に分子時計といった幅広い知見がひしめき
合っている。個性豊かな研究者たちが、生物の来歴をめぐって激しく論争した経緯も、
本書は臨場感たっぷりに映しとっている。
第III部では、読み進むにつれてますます「ありそうもない度合い」の高い海越え
の事例が登場するので、その頂点までどうかお見逃しなく。それらはいずれも、
著者が最後に語る「私たちの世界は、なぜ今このような姿をしているのか?」という
大きな描像の大切なピースなのだ。
- 本の長さ480ページ
- 言語日本語
- 出版社みすず書房
- 発売日2017/11/11
- ISBN-104622086492
- ISBN-13978-4622086499
商品の説明
出版社からのコメント
著者について
アラン・デケイロス(Alan de Queiroz)
サイエンス・ライターとしてThe Scientist、The Huffington Post、
The Wall Street Journalなどに寄稿。ネヴァダ大学生物学部門非常
勤研究員。専門は進化生物学。
初の単著である本書は、Library JournalとBooklistで2014年の
ベストブックに選出された。
柴田裕之(しばた・やすし)
翻訳家。訳書に、ハラリ『サピエンス全史』(上下)(河出書房新社)、
ヴァン・デア・コーク『身体はトラウマを記録する』、ドゥ・ヴァール
『共感の時代へ』『道徳性の起源』(以上、紀伊國屋書店)、ミシェル
『マシュマロ・テスト』、リドレー『繁栄』 (以上、ハヤカワ・ノン
フィクション文庫)、ほか。
林美佐子(はやし・みさこ)
東京女子大学文理学部卒業。バベル翻訳学校ノンフィクション専科修了。
さまざまな一般教養書で翻訳協力多数。
サイエンス・ライターとしてThe Scientist、The Huffington Post、
The Wall Street Journalなどに寄稿。ネヴァダ大学生物学部門非常
勤研究員。専門は進化生物学。
初の単著である本書は、Library JournalとBooklistで2014年の
ベストブックに選出された。
柴田裕之(しばた・やすし)
翻訳家。訳書に、ハラリ『サピエンス全史』(上下)(河出書房新社)、
ヴァン・デア・コーク『身体はトラウマを記録する』、ドゥ・ヴァール
『共感の時代へ』『道徳性の起源』(以上、紀伊國屋書店)、ミシェル
『マシュマロ・テスト』、リドレー『繁栄』 (以上、ハヤカワ・ノン
フィクション文庫)、ほか。
林美佐子(はやし・みさこ)
東京女子大学文理学部卒業。バベル翻訳学校ノンフィクション専科修了。
さまざまな一般教養書で翻訳協力多数。
登録情報
- 出版社 : みすず書房 (2017/11/11)
- 発売日 : 2017/11/11
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 480ページ
- ISBN-10 : 4622086492
- ISBN-13 : 978-4622086499
- Amazon 売れ筋ランキング: - 87,418位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 9,391位科学・テクノロジー (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年12月14日に日本でレビュー済み
本書の主題は、どのようにして現在のように「島や大陸ごとに異なる種の生物が栄えるようになったか」というものである。
筆者は、長らく主流であった「プレートテクトニクスによる大陸移動で大陸や島の分断が発生することにより、生物種が分かれて、それぞれ独自の進化を遂げた」という分断分布説に抗し、「サルが漂流してアフリカから南米に渡る」のような、海を越えた長距離分散の重要性を訴える。
生物地理学の考え方をダーウィンから現在まで遡って論争してして眺めていく部分が、本書の結構な割合を占めている。
大陸移動が分かる前は陸橋によって大陸同士は繋がっていたという考えで分断分布的な考えは捉えられており、なかなか正当化しづらい考えに見えたが、プレートテクトニクスの登場で分断分布が一気に力づいたというストーリーで見られている。
一方の長距離分散を支持する筆者は、分子時計や分岐図などを考察することにより、分岐年代が大陸の分裂よりもはるかに後であることを示し、大陸移動で説明はつかないと論じている。
カエル(通常海水では生きられないとされる)やサルの海越えなど、なかなか難しそうな事態も「十分可能性はありそうだ」と思わせるだけの傍証を挙げている。
ただ、大陸移動で説明がつかないことは説得力を持って示されているが、「大陸移動ではないから海越えと考えるしか無かろう」というような、消去法的な形で事例が並んでいくだけなので、「大陸移動による分断分布が否定された」という以上の積極的な理解の深まりをいささか感じ取りにくいのも事実である。
もしあまりにも海越えが容易ならどの島や大陸も同じような生物種になってしまうはずなので、海越えは「可能だけど頻度は低い」ぐらいのはずである。
そうすると、「どの種は確率的に海越えしやすいか」「どの向きへの海越えがしやすいのか」「その程度の海越え確率だと種分布はどうなっていくのか」等々を考察することで、現在の生物種のありようについて一定の説明が出来る(し、すべき)と思うが、そういった「長距離分散とすると何が予言できるか」があまり提示されておらず、分断分布の補集合的な位置づけにとどまっているのはいささか残念であった。
文章は非常に読みやすく書かれているが、「悪役としての分断分布説」にかなりバイアスが入っているように見えるのも事実である。
実際、専門家によって歴史記述のバイアスについて指摘されている(「the monkey's voyage 三中信宏」で検索すると書評が出てくる)。
このあたりは鵜呑みにしすぎずに、割り引いて読んだ方がいいだろう。
筆者は、長らく主流であった「プレートテクトニクスによる大陸移動で大陸や島の分断が発生することにより、生物種が分かれて、それぞれ独自の進化を遂げた」という分断分布説に抗し、「サルが漂流してアフリカから南米に渡る」のような、海を越えた長距離分散の重要性を訴える。
生物地理学の考え方をダーウィンから現在まで遡って論争してして眺めていく部分が、本書の結構な割合を占めている。
大陸移動が分かる前は陸橋によって大陸同士は繋がっていたという考えで分断分布的な考えは捉えられており、なかなか正当化しづらい考えに見えたが、プレートテクトニクスの登場で分断分布が一気に力づいたというストーリーで見られている。
一方の長距離分散を支持する筆者は、分子時計や分岐図などを考察することにより、分岐年代が大陸の分裂よりもはるかに後であることを示し、大陸移動で説明はつかないと論じている。
カエル(通常海水では生きられないとされる)やサルの海越えなど、なかなか難しそうな事態も「十分可能性はありそうだ」と思わせるだけの傍証を挙げている。
ただ、大陸移動で説明がつかないことは説得力を持って示されているが、「大陸移動ではないから海越えと考えるしか無かろう」というような、消去法的な形で事例が並んでいくだけなので、「大陸移動による分断分布が否定された」という以上の積極的な理解の深まりをいささか感じ取りにくいのも事実である。
もしあまりにも海越えが容易ならどの島や大陸も同じような生物種になってしまうはずなので、海越えは「可能だけど頻度は低い」ぐらいのはずである。
そうすると、「どの種は確率的に海越えしやすいか」「どの向きへの海越えがしやすいのか」「その程度の海越え確率だと種分布はどうなっていくのか」等々を考察することで、現在の生物種のありようについて一定の説明が出来る(し、すべき)と思うが、そういった「長距離分散とすると何が予言できるか」があまり提示されておらず、分断分布の補集合的な位置づけにとどまっているのはいささか残念であった。
文章は非常に読みやすく書かれているが、「悪役としての分断分布説」にかなりバイアスが入っているように見えるのも事実である。
実際、専門家によって歴史記述のバイアスについて指摘されている(「the monkey's voyage 三中信宏」で検索すると書評が出てくる)。
このあたりは鵜呑みにしすぎずに、割り引いて読んだ方がいいだろう。
2018年3月3日に日本でレビュー済み
「(我が家の子供たちの『野生動物の世界』という)地図には『走鳥類』と呼ばれるグループに属する4種類の飛べない鳥が描かれている。南アメリカ大陸のレアとアフリカ大陸のダチョウが大西洋を挟んで向かい合っており、そこから何千キロメートルも離れたオーストラリア大陸にはエミューの群れが見られ、ニュージーランドでは1羽のキーウィが地面をつついている。これら4つのグループは明らかに別個の種だが、全体的に見ればみんなかなり緊密な関係にある。だとすれば、大海原に隔てられたこれらの遠く離れた土地に、どうして行き着いたのか? 同様に、この地図では中央アフリカのマンドリル(大型のヒヒ)が、大西洋を挟んで南アメリカ大陸のオマキザルという別のサルのほうをじっと見詰めている姿が見られる。この2つの種も明らかに異なるが、ともにかなり緊密な進化上のグループに属していることも明白だ。そして彼らも、類縁種がどうして海洋で隔てられた陸塊にそれぞれ行き着いたのかという謎を突きつけてくる。そのうえどちらの場合にも、地図に見事に描かれた海底の地形を見ればわかるとおり、問題の陸塊はみな、浅い大陸棚ではなく深い海洋で隔てられている。このせいで謎はますます深まる。なぜなら、ベーリング陸橋のような陸橋を介した移動を持ち出してこれらの断片的な分布を説明するわけにはいかないからだ」。
この謎は、チャールズ・ダーウィンの時代以来ずっと博物学者たちを魅了し、悩ませてきた。ダーウィン自身が分散説から陸橋説へ、そして再び分散説へ、そこからまた分断分布生物地理学へと、まるで振り子のように揺れ動いた例からも明らかだろう。
この謎を解きたいという著者の執念が、『サルは大西洋を渡った――奇跡的な航海が生んだ進化史』(アラン・デケイロス著、柴田裕之・林美佐子訳、みすず書房)を書かせたのである。
歴史生物地理学の世界では分断分布説(ゴンドワナ大陸の分裂によって形成された各大陸で生物の分断分布が生じたとする説)と長距離海上分散説(海洋という障壁を越え、新たな土地にうまく個体群が定着できたことで生物の分散が生じたとする説)がせめぎ合ってきたが、長距離海上分散説の立場に立つ著者の結論は、このようなものである。「サルや齧歯類、トカゲ、ワニ、モウセンゴケ、ナンヨウスギ、ナンキョクブナ、そのほか無数の生物による海洋を渡る旅はみな稀で偶発的な事象であり、どんな時や場所であれ、誰も起こるとは予期しないたぐいの出来事だ。『ほんのつまらない小事にしか見えないもの』を何かしら変えて生命の録画テープを再生すれば、こうした生物の進出はどれ一つとして起こらなくなる(が、私たちの知る歴史にはない、ほかの出来事が確実に起こる)」。
「たとえば、サルがアフリカ大陸から南アメリカ大陸に進出するという順当な筋書きを考えてほしい。今日のコンゴ川やニジェール川に似たアフリカ大陸の大河のほとりの木で、何をするでもなく時間を過ごしているサルの群れから話を始めよう。何日も豪雨が続いており、そのせいで濁流となった川が土手の一部をサルのいる木もろとも大ききえぐり、その塊はまるごと川に落ちて流される。この自然の筏は遠い下流へ運ばれ、やがて海に達して西向きの海流に捕まる。海に出るとサルたちは、その小さな浮き島で見つかる食べ物は何でも口にする。雨が降ると、束の間たまっている水を飲む。何週間ものち、すでに相当の海水を吸い、かろうじて浮いていた筏は南アメリカ大陸の海岸に打ち上げられ、痩せ細った脱水状態のサルの生き残りが数頭、水音を立てて浜に降り、すぐそばの森の中に消える。彼らはいっしょに暮らし、見慣れないが食べられる果実や昆虫を餌にして、いずれはつがって子供を作り、育てる。1000年後、その子孫はそうとう大きな個体群となり、ついに新世界ザルの放散をすべて生じさせる」。
「(こうした)進出が成功するか否かは、どれ一つをとっても簡単に違う方向に転がりうる出来事の数々によって決まった可能性が高い。そしてこれと似たような偶然の積み重ねは、種子が鳥の羽毛に引っかかったり、蛾が風にさらわれたり、ワニが海流に乗ったりするなどして起こる長距離の偶発的分散のおそらくほとんどの事例に当てはまる(だからこそこれらは『偶発的』事象と言える)」。要するに、生物の海越えの旅や他の長距離進出の事象は、基本的に予測不能だというのだ。著者は、この生命の予測不能性を重視している。
分断分布説が成立しない根拠を、著者が挙げている。「分断分布説の問題は、分断と分岐の時期がまったく違うことだ。もし南大西洋(アフリカ大陸と南アメリカ大陸の分裂から生じた海)が誕生したために広鼻猿類と狭鼻猿類が分かれたのなら、進化樹における両者の分岐は、およそ1億年前に生じたことにならざるをえない。これがどれほど昔かを示すために言えば、それほど前に分岐が起こったのなら、霊長類の進化樹では初期の枝ではないことがわかっている新世界ザルの系統と旧世界ザルの系統が、最初期のものとして知られるどんな霊長類の化石よりもじつは約5000万年も古いことになる。それどころか、それらの系統は、あらゆる胎盤哺乳類の最初の化石として知られるものよりおよそ3500万年も古くなくてはならないのだ」。サルは旧世界に由来し、南アメリカ大陸に分散したということ、それには海を渡る必要があったこと――は明らかだというのだ。
進化に興味を持つ者にとって見逃すことのできない一冊である。
この謎は、チャールズ・ダーウィンの時代以来ずっと博物学者たちを魅了し、悩ませてきた。ダーウィン自身が分散説から陸橋説へ、そして再び分散説へ、そこからまた分断分布生物地理学へと、まるで振り子のように揺れ動いた例からも明らかだろう。
この謎を解きたいという著者の執念が、『サルは大西洋を渡った――奇跡的な航海が生んだ進化史』(アラン・デケイロス著、柴田裕之・林美佐子訳、みすず書房)を書かせたのである。
歴史生物地理学の世界では分断分布説(ゴンドワナ大陸の分裂によって形成された各大陸で生物の分断分布が生じたとする説)と長距離海上分散説(海洋という障壁を越え、新たな土地にうまく個体群が定着できたことで生物の分散が生じたとする説)がせめぎ合ってきたが、長距離海上分散説の立場に立つ著者の結論は、このようなものである。「サルや齧歯類、トカゲ、ワニ、モウセンゴケ、ナンヨウスギ、ナンキョクブナ、そのほか無数の生物による海洋を渡る旅はみな稀で偶発的な事象であり、どんな時や場所であれ、誰も起こるとは予期しないたぐいの出来事だ。『ほんのつまらない小事にしか見えないもの』を何かしら変えて生命の録画テープを再生すれば、こうした生物の進出はどれ一つとして起こらなくなる(が、私たちの知る歴史にはない、ほかの出来事が確実に起こる)」。
「たとえば、サルがアフリカ大陸から南アメリカ大陸に進出するという順当な筋書きを考えてほしい。今日のコンゴ川やニジェール川に似たアフリカ大陸の大河のほとりの木で、何をするでもなく時間を過ごしているサルの群れから話を始めよう。何日も豪雨が続いており、そのせいで濁流となった川が土手の一部をサルのいる木もろとも大ききえぐり、その塊はまるごと川に落ちて流される。この自然の筏は遠い下流へ運ばれ、やがて海に達して西向きの海流に捕まる。海に出るとサルたちは、その小さな浮き島で見つかる食べ物は何でも口にする。雨が降ると、束の間たまっている水を飲む。何週間ものち、すでに相当の海水を吸い、かろうじて浮いていた筏は南アメリカ大陸の海岸に打ち上げられ、痩せ細った脱水状態のサルの生き残りが数頭、水音を立てて浜に降り、すぐそばの森の中に消える。彼らはいっしょに暮らし、見慣れないが食べられる果実や昆虫を餌にして、いずれはつがって子供を作り、育てる。1000年後、その子孫はそうとう大きな個体群となり、ついに新世界ザルの放散をすべて生じさせる」。
「(こうした)進出が成功するか否かは、どれ一つをとっても簡単に違う方向に転がりうる出来事の数々によって決まった可能性が高い。そしてこれと似たような偶然の積み重ねは、種子が鳥の羽毛に引っかかったり、蛾が風にさらわれたり、ワニが海流に乗ったりするなどして起こる長距離の偶発的分散のおそらくほとんどの事例に当てはまる(だからこそこれらは『偶発的』事象と言える)」。要するに、生物の海越えの旅や他の長距離進出の事象は、基本的に予測不能だというのだ。著者は、この生命の予測不能性を重視している。
分断分布説が成立しない根拠を、著者が挙げている。「分断分布説の問題は、分断と分岐の時期がまったく違うことだ。もし南大西洋(アフリカ大陸と南アメリカ大陸の分裂から生じた海)が誕生したために広鼻猿類と狭鼻猿類が分かれたのなら、進化樹における両者の分岐は、およそ1億年前に生じたことにならざるをえない。これがどれほど昔かを示すために言えば、それほど前に分岐が起こったのなら、霊長類の進化樹では初期の枝ではないことがわかっている新世界ザルの系統と旧世界ザルの系統が、最初期のものとして知られるどんな霊長類の化石よりもじつは約5000万年も古いことになる。それどころか、それらの系統は、あらゆる胎盤哺乳類の最初の化石として知られるものよりおよそ3500万年も古くなくてはならないのだ」。サルは旧世界に由来し、南アメリカ大陸に分散したということ、それには海を渡る必要があったこと――は明らかだというのだ。
進化に興味を持つ者にとって見逃すことのできない一冊である。
2018年1月8日に日本でレビュー済み
現在の世界の生物相の形成過程を明らかにしようとする歴史生物地理学の本.非常に興味のある分野なので面白く読むことができた.大陸移動による生物相の「分断」が,各大陸・地域における固有の生物相の元になっているというのが一般に流布しているイメージだが,意外に多くの動植物が海洋を長距離分散した可能性を明確に示している.そして,それらが稀な事象ではあるが,長距離分散によって移入した祖先が多様化して,それぞれの地域固有の生態系を形成している事を示していて興味深い.
ただし,分断生物地理学に関する科学史的な記述については,三中信宏氏による痛烈な批判(http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20160126/1453854925)があるので参考にしていただきたい.分断生物地理学を提唱していた研究者についての本書の記述は極端に偏っているようだ.また,DNA解析による遺伝子系統樹で生物の分布の歴史を分断・分散のどちらかに偏らずにデータで解明するのは,J.C.AviseらがPhylogeographyと名付けて牽引してきた研究分野である.三中氏も指摘しているが,この本はまさにphylogeographyの本でありながら,その言葉もAviseの名前も一切出てこない.どうもその辺は腑に落ちない.
ただ,本書の著者デケイロスが語る分断生物地理学の欠点について,私個人としてはスムーズに納得している面もある.1980年代に分岐分類学と分断生物地理学が日本に入ってきて,1990年代に大学院生だった私はそうした分野についての和文の解説をいろいろ読んだのだが,そのころに学んだ記憶と本書が指摘する分断生物地理学の欠点にそれほど大きな齟齬はなかったような気がする(デケイロスの文はちょっとおおげさかな,と思うが).2000年代初頭にも,某地域の生物について分断生物地理学的手法で解析している研究者の話を聞く機会があったときに,時間スケールを全く考慮しない不自然な考察をされていたような記憶がある.さらに,2012年に北大図書刊行会から出た「植物地理の自然史」では,どう考えても大陸間の分散,あるいは島嶼間の分散と解釈した方が自然に見える分子データを,その対象植物種は海を渡れないという前提に固執して,ものすごく不自然な議論を展開する章がいくつかあった.おそらくそれらは「分断生物地理学」的な思考にとらわれてしまっているのだろうと思う.そう考えると,三中氏はデケイロスによる分断生物地理学者の描き方を強く批判しているが,実際は分断生物地理学が現実を適切に見ることのできない研究者を生み出してしまったのは事実だったのではなかろうかと思える.
訳文も読みやすく,専門用語が適切に訳せていないところも散見されるが(describedとかrelatedとかね…),本書のように生物地理を学べる本は貴重だし,世界の動植物の多様性に興味がある人には良い本だと思う.
ただし,分断生物地理学に関する科学史的な記述については,三中信宏氏による痛烈な批判(http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20160126/1453854925)があるので参考にしていただきたい.分断生物地理学を提唱していた研究者についての本書の記述は極端に偏っているようだ.また,DNA解析による遺伝子系統樹で生物の分布の歴史を分断・分散のどちらかに偏らずにデータで解明するのは,J.C.AviseらがPhylogeographyと名付けて牽引してきた研究分野である.三中氏も指摘しているが,この本はまさにphylogeographyの本でありながら,その言葉もAviseの名前も一切出てこない.どうもその辺は腑に落ちない.
ただ,本書の著者デケイロスが語る分断生物地理学の欠点について,私個人としてはスムーズに納得している面もある.1980年代に分岐分類学と分断生物地理学が日本に入ってきて,1990年代に大学院生だった私はそうした分野についての和文の解説をいろいろ読んだのだが,そのころに学んだ記憶と本書が指摘する分断生物地理学の欠点にそれほど大きな齟齬はなかったような気がする(デケイロスの文はちょっとおおげさかな,と思うが).2000年代初頭にも,某地域の生物について分断生物地理学的手法で解析している研究者の話を聞く機会があったときに,時間スケールを全く考慮しない不自然な考察をされていたような記憶がある.さらに,2012年に北大図書刊行会から出た「植物地理の自然史」では,どう考えても大陸間の分散,あるいは島嶼間の分散と解釈した方が自然に見える分子データを,その対象植物種は海を渡れないという前提に固執して,ものすごく不自然な議論を展開する章がいくつかあった.おそらくそれらは「分断生物地理学」的な思考にとらわれてしまっているのだろうと思う.そう考えると,三中氏はデケイロスによる分断生物地理学者の描き方を強く批判しているが,実際は分断生物地理学が現実を適切に見ることのできない研究者を生み出してしまったのは事実だったのではなかろうかと思える.
訳文も読みやすく,専門用語が適切に訳せていないところも散見されるが(describedとかrelatedとかね…),本書のように生物地理を学べる本は貴重だし,世界の動植物の多様性に興味がある人には良い本だと思う.