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新書837孫文と陳独秀 (平凡社新書 837) 新書 – 2017/2/15

5.0 5つ星のうち5.0 2個の評価

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辛亥革命の大立者は国父と称えられ、新文化運動の指導者にして中国共産党創設者は裏切り者扱い。中国近代を招来した二人の真の姿は。
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商品の説明

著者について

1944年山口県生まれ。 明治学院大学法学部、県立長崎シーボルト大学国際情報学部、北九州市立大学大学院社会システム研究科の教授を歴任し、北九州市立大学名誉教授。中国政治、外交史専攻。法学博士。著書に、『孫中山の革命と政治指導』(研文出版)、『孫文と袁世凱』『素顔の孫文』(以上、岩波書店)、『陳独秀』(朝日選書)、『陳独秀の時代』(慶應義塾大学出版会)、『中華民国』(中公新書)、『中国の愚民主義』(平凡社新書)などがある。

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 平凡社 (2017/2/15)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2017/2/15
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 新書 ‏ : ‎ 286ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4582858376
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4582858372
  • カスタマーレビュー:
    5.0 5つ星のうち5.0 2個の評価

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上位レビュー、対象国: 日本

2023年9月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
民主主義的議会制を求めて辛亥革命を行なった革命家2人が、どうして最終的に、一等独裁国家を作っていったか、詳しく分析されている。
2017年5月8日に日本でレビュー済み
孫文は辛亥革命のヒーローであり、台湾に追われた中国国民党にも、大陸を支配していた中国共産党にとっても国父であった。孫文の掲げた「蓮ソ容共扶助農工」はあたかも、その当時の中国共産党のスローガンとも疑うものでもあった。

 この一方で、陳独秀は中国共産党の創立者の一人であったが、入学試験出題者からは共産党の創立者を問い、毛沢東と解答させる引っ掛けに過ぎなかった。正直、陳独秀の評価もネームヴァリューもこの程度のものであった。彼は中国近代史の中でも反スターリン、トロキッスト、右派と評価された存在に過ぎなかったようである。

 本書により、私の孫文と陳独秀の評価は大きく変わった。孫文が現中国の国父であることは否定できないが、彼の唱えた「民族、民権、民生」(三民主義)の本質とは何であったのあろうか。彼の本質はいわゆる、今の開発独裁主義である。このやり方で大きく発展したシンガポールも華僑が支配する。愚民には望むべき者はなく、インテリや識者が世の中を力で改革していくというスタンスである。中華民族、中国と言う巨大性を考慮すれば民意の集約やボトムアップという発想は不要ということでもある。

  ここに独特の権謀術策が加味される。ロシア革命を成功させたソ連とも協力するし、敵の敵は味方というスタンスで軍閥との「協働」、清朝を打破し中華民族政権の奪取のためには何でもするということであった。日清戦争は世界史的な評価は我が国による侵略行為であるが、彼にとっての目標は滅満興漢であった。先ずは身内の敵を淘汰することが彼の目標であったのであろう。ここは対華21か条の要求以降に激化する我が国の大陸進出に一定の評価を与えていたという毛沢東の姿勢とも一致する。毛沢東は国民党軍を撃破した日本軍を評価していたという記録もある。

  ただ、革命家であった孫文が欧米や日本の資本家から多くの資金を得てきたことは、彼が政権をとった際の利権を目指したものだけでは理解はできない。人間的な魅力もあったのであろう。

  さて、陳独秀は孫文とは異なり先ずは、人民の覚醒とレベルアップが必要とし、孫文とは一線を画していた。彼の実直さは、他国(ソ連)に革命を依存することにも、軍閥と連携することにも常に否定的であり、当初は欧州の啓蒙思想をベースとしていたという。理想主義者でもあり第一次世界史戦後のハワードウリルソンが唱えた国際平和主義にも共感を寄せていたという。ただ、この共感は我が国による対華21か条の要求を欧米列強が無視したことにより無残にも崩れ去っている。

  ソ連の革命への介入を否定し、常に理想を求めた陳独秀は歴史の中から中国共産党の創業者という名前だけを残し、歴史から抹殺されてきたといえる。その一方で、孫文の思想は今も中国共産党を支配している。そんなことを教えてくれた一冊であった。

  余談ではあるが、孫文、陳独秀は女性に関しては現在の女性運動家からは忌み嫌われる人生を送っている。孫文夫人、中華人民共和国名誉主席宋慶齢は孫文をどうのように見ていたのであろうか。

 現代中国を学ぶ名著である。
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