まえがきで言及されている高橋まつりさんの自殺に関する詳細がなく、簡潔なものに留まっていることに肩透かしを喰らったが、かつて就活をした身として笹山氏の考える「ブラック職場が生まれる背景」には頷けるものが多い。就活を通じて、若者は都合よく使い潰される奴隷に成り下がる。
2001年、大阪府吹田市の国立循環器病センターの脳神経外科病棟に勤務していた看護師、村上優子さん(当時25歳)がくも膜下出血で死亡。
倒れる前の時間外労働は過労死ラインを割る月50~60時間だったものの、患者の世話、勉強会、研修会準備などによる日常的な時間外労働があったという。
新人指導係にもなっていて、一日の勤務を終えて次の勤務が始まるまでの感覚が5時間程度しかない日が月平均5回あった。
このセンターは2017年、医師などの時間外労働を最大で月300時間まで可能にする労使協定を結んでいた。背筋が凍る、ブラック職場の実例。
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ブラック職場 過ちはなぜ繰り返されるのか? (光文社新書) 新書 – 2017/11/16
笹山尚人
(著)
電通社員・高橋まつりさんの過労死事件は、
私たちの社会に大きな課題を突きつけた。
なぜ、ブラックな職場はなくならないのか?
数多くの労働事件を手がけてきた弁護士が、
ブラック職場が生まれる背景に迫りながら、
ホワイトな社会の実現に向けた解決策を示す。
◎ 内容紹介
2015年、電通に勤めていた
高橋まつりさん(当時24歳)が過労によって亡くなったことは記憶に新しい。
同社では、1991年にも若手社員が過労死している。
過ちは、なぜ繰り返されるのか。
日本社会は、21世紀に入って労働者をより冷遇するような状況に進んでいるように見える。
非正規雇用の労働者が増え、労働条件の劣悪さに苦しむ事例、
裁判に訴えても声が届かない例は数知れない。
パワハラを始めとする様々なハラスメントも横行している。
なぜ、ブラックな職場はなくならないのか?
労働弁護士が、豊富な事例からブラックな職場の問題に横たわる背景を検討しつつ、
ホワイトな社会の実現に向けた具体的な解決策を示す。
◎ 目次
はじめに
【第1章】「ブラック職場」の正体
【第2章】「長時間労働」と「やりがい搾取」
【第3章】非正規と低賃金
【第4章】解雇と復職の困難
【第5章】人事権を再考せよ
【第6章】労働法の存在理由と問題点
【第7章】5つの解決策
【第8章】ホワイトな社会に向けて
おわりに
◎ 著者プロフィール
笹山尚人(ささやまなおと)
1970年北海道札幌市生まれ。1994年、中央大学法学部卒業。
2000年、弁護士登録。第二東京弁護士会会員。東京法律事務所所属。
弁護士登録以来、青年労働者や非正規雇用労働者の権利問題、
労働事件や労働運動を中心に扱って活動している。
著書に『人が壊れてゆく職場』『それ、パワハラです』(以上、光文社新書)、
『労働法はぼくらの味方! 』『パワハラに負けない! 』(以上、岩波ジュニア新書)、
『ブラック企業によろしく』(KADOKAWA/中経出版)、
共著に『学校で労働法・労働組合を学ぶ』(きょういくネット)などがある。
- 本の長さ241ページ
- 言語日本語
- 出版社光文社
- 発売日2017/11/16
- ISBN-104334043194
- ISBN-13978-4334043193
登録情報
- 出版社 : 光文社 (2017/11/16)
- 発売日 : 2017/11/16
- 言語 : 日本語
- 新書 : 241ページ
- ISBN-10 : 4334043194
- ISBN-13 : 978-4334043193
- Amazon 売れ筋ランキング: - 931,417位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,237位光文社新書
- - 84,243位ビジネス・経済 (本)
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トップレビュー
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2023年3月21日に日本でレビュー済み
2018年12月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
タイトルからもっと"なぜ"の部分にフォーカスされていると思ったが、その答えは前半にさらりと記載されている。弁護士の先生が書かれた書籍なので、法律や判決文が引用されており、正直読み難い。やはり職業柄事件後の個別の対応が主たる内容であり、"なぜ"に対する答えを期待して読むと物足らない。
2017年11月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
筆者は『はじめに』で、2000年3月に下された第一電通事件の最高裁判決で、使用者には、「業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務」があるとの社会的教訓を残し、人を雇う企業や事業体がこれを順守しなければならないという社会的規範が確立されたにもかかわらず、21世紀になって、非正規雇用の労働者が増え、その労働条件の劣悪さに苦しむ事例、しかも裁判所に救済を求めても願いがかなわない事例は枚挙にいとまがないとしている。
同じ労働者として、まず第1章の冒頭から驚かされたのが、筆者が労働相談のイベントで、「年次有給休暇」という言葉もそうした制度の存在も知らないという若者に出くわし、しかもそれが、その後も似たような場面に何度も遭遇することになる最初の一例だったという一文だった。筆者は、ブラック企業が生まれる原因として、使用者側を含めたそうした「労働のルールに対する知識・意識の欠如」、1985年に制定された労働者派遣法を一つの転機とした「労働者」を「商品」として扱う企業の近視眼的な「利益至上主義」あるいは「利益優先主義」の経営原理、「労働組合の組織率の低下」などを挙げ、「ブラック職場」とは、まさに、「人が壊れていく職場」なのだとしている。
筆者は、第2章では「長時間労働」と「やりがい搾取」、第3章では非正規と低賃金、第4章では解雇と通説判例で原則として労働者には就労請求権がないと解されていることに起因する解雇無効時の復職の困難、第5章では事実上無制約な人事権といった問題ごとに、筆者が取り扱った事案を始めとしたさまざまな事例を紹介し、当該事例に関係する労働法の内容を引用・解説しつつ、違法あるいは形式上は合法な取扱いが横行して人が壊れていくブラック職場の実態・問題点を紹介している。
筆者は第6章において、ブラック職場との関係で、労働者と使用者とでは、法形式としては対等・平等でも、実際の力関係においては歴然とした差があり、労働者は不利な立場に置かれているという現実に対して、「自由な労働契約」関係を徹底させると、結果として現出するのは、低賃金、長時間労働などの劣悪な労働条件であるとし、それを是正するのが労働法だとしつつも、その法規制はそれほど強固なものではなく、法を守らせ実現するための仕組みも十分に機能していない現実もあり、裁判の場合も、主張立証責任を労働者が負うハードルの高さがあるとしている。
筆者は、これらの問題点を踏まえて第7章で、ブラック職場をなくし、ブラック職場が生まれないようにするために、今取り組むことができる5つの解決策を提案し、最終第8章では、すでに始まっている労働組合、企業・事業体、労使、個人、国や地方自治体の取り組みを紹介している。
同じ労働者として、まず第1章の冒頭から驚かされたのが、筆者が労働相談のイベントで、「年次有給休暇」という言葉もそうした制度の存在も知らないという若者に出くわし、しかもそれが、その後も似たような場面に何度も遭遇することになる最初の一例だったという一文だった。筆者は、ブラック企業が生まれる原因として、使用者側を含めたそうした「労働のルールに対する知識・意識の欠如」、1985年に制定された労働者派遣法を一つの転機とした「労働者」を「商品」として扱う企業の近視眼的な「利益至上主義」あるいは「利益優先主義」の経営原理、「労働組合の組織率の低下」などを挙げ、「ブラック職場」とは、まさに、「人が壊れていく職場」なのだとしている。
筆者は、第2章では「長時間労働」と「やりがい搾取」、第3章では非正規と低賃金、第4章では解雇と通説判例で原則として労働者には就労請求権がないと解されていることに起因する解雇無効時の復職の困難、第5章では事実上無制約な人事権といった問題ごとに、筆者が取り扱った事案を始めとしたさまざまな事例を紹介し、当該事例に関係する労働法の内容を引用・解説しつつ、違法あるいは形式上は合法な取扱いが横行して人が壊れていくブラック職場の実態・問題点を紹介している。
筆者は第6章において、ブラック職場との関係で、労働者と使用者とでは、法形式としては対等・平等でも、実際の力関係においては歴然とした差があり、労働者は不利な立場に置かれているという現実に対して、「自由な労働契約」関係を徹底させると、結果として現出するのは、低賃金、長時間労働などの劣悪な労働条件であるとし、それを是正するのが労働法だとしつつも、その法規制はそれほど強固なものではなく、法を守らせ実現するための仕組みも十分に機能していない現実もあり、裁判の場合も、主張立証責任を労働者が負うハードルの高さがあるとしている。
筆者は、これらの問題点を踏まえて第7章で、ブラック職場をなくし、ブラック職場が生まれないようにするために、今取り組むことができる5つの解決策を提案し、最終第8章では、すでに始まっている労働組合、企業・事業体、労使、個人、国や地方自治体の取り組みを紹介している。
2018年4月12日に日本でレビュー済み
人事、総務の仕事に従事する方は必読です。また経営者、就活生も読んでおくべき内容が多く含まれています。示唆に富む記述が続きました。
働き方改革が叫ばれています。それの議論の前提として、労働法の知識は不可欠で、特に労働問題に関する具体例は多くの労働者、経営者にとって他山の石として過ちをおこさないように知っておくべき内容だと思っています。
労働問題を多く扱っている弁護士である筆者の見解は、問題解決のエビデンスとして受け取りました。
多くの労働法の本を読了してきたわけですが、本書には平易な語り口の中に奥深い示唆が含まれています。
102pの「解雇された場合に、復職するという法制度が整えられていない」ことを説明し、「労働法の解釈上、労働者には就労請求権がないとされているからである」と述べてありました。労働者にとって労働請求権がないというのが通説判例であり、それが「多くの解雇事件の場合に障害となって立ち現れる。(104p)」とのこと。
解雇無効の判断を勝ち取っても、金銭解決する事例が多いのはそのことに由来しているわけです。「ブラック企業の横暴を認めないためには、就労請求権の存在を肯定する解釈に舵を切るべきである。(106p)」のまとめは良く理解できましたし、本書の立ち位置を明確に表している言葉だと受け取りました。
120pの子ども2人の重度のアトピー性皮膚炎の育児に関わって、「転勤命令は権利の濫用として無効だ」という某出版会社に対する東京地裁の判決は参考になりました。限定的ではありますが、転勤命令が権利の濫用になるケースや範囲が理解できたからです。弁護士による本の記述は、判決、判例の詳しさに強みを感じます。
また、145pにあるように、労働基準監督官の絶対数の少なさは指摘の通りです。働き方改革の前提として、コンプライアンスの担保が必要で、それを取り締まる監督官の重要性は言うまでもありません。
184p以降の「法規制を守らせる仕組み、運用の体制を整える」が一番大切だと思っています。198pの「ホワイト企業」の認証もより大切な取り組みです。社会全体がそれを規範として動くようになればもっと働きやすくなるのは間違いありません。
213pのラストの行に書かれている労働組合活動の例示は有効でしょう。このような団交なら効果的だと思いました。
なお、222pの「Eさんパワハラ事件」は言語道断です。事業体を実名で挙げていないのは、和解時の約束なのかもしれませんが、ひどいケースでした。
働き方改革が叫ばれています。それの議論の前提として、労働法の知識は不可欠で、特に労働問題に関する具体例は多くの労働者、経営者にとって他山の石として過ちをおこさないように知っておくべき内容だと思っています。
労働問題を多く扱っている弁護士である筆者の見解は、問題解決のエビデンスとして受け取りました。
多くの労働法の本を読了してきたわけですが、本書には平易な語り口の中に奥深い示唆が含まれています。
102pの「解雇された場合に、復職するという法制度が整えられていない」ことを説明し、「労働法の解釈上、労働者には就労請求権がないとされているからである」と述べてありました。労働者にとって労働請求権がないというのが通説判例であり、それが「多くの解雇事件の場合に障害となって立ち現れる。(104p)」とのこと。
解雇無効の判断を勝ち取っても、金銭解決する事例が多いのはそのことに由来しているわけです。「ブラック企業の横暴を認めないためには、就労請求権の存在を肯定する解釈に舵を切るべきである。(106p)」のまとめは良く理解できましたし、本書の立ち位置を明確に表している言葉だと受け取りました。
120pの子ども2人の重度のアトピー性皮膚炎の育児に関わって、「転勤命令は権利の濫用として無効だ」という某出版会社に対する東京地裁の判決は参考になりました。限定的ではありますが、転勤命令が権利の濫用になるケースや範囲が理解できたからです。弁護士による本の記述は、判決、判例の詳しさに強みを感じます。
また、145pにあるように、労働基準監督官の絶対数の少なさは指摘の通りです。働き方改革の前提として、コンプライアンスの担保が必要で、それを取り締まる監督官の重要性は言うまでもありません。
184p以降の「法規制を守らせる仕組み、運用の体制を整える」が一番大切だと思っています。198pの「ホワイト企業」の認証もより大切な取り組みです。社会全体がそれを規範として動くようになればもっと働きやすくなるのは間違いありません。
213pのラストの行に書かれている労働組合活動の例示は有効でしょう。このような団交なら効果的だと思いました。
なお、222pの「Eさんパワハラ事件」は言語道断です。事業体を実名で挙げていないのは、和解時の約束なのかもしれませんが、ひどいケースでした。
2017年12月24日に日本でレビュー済み
長時間労働、賃金未払い、ハラスメント・・・このような労働者の人権をないがしろにしている「ブラック職場」に係る諸問題について長年関わってきた弁護士による著書であり、自ら手掛けた事件などを例に出し、「なぜこのような問題が起きるのか」「問題を繰り返さないための具体的方策は何か」について検討している。
この本を読んで感じたのは、使用者も労働者も、労働法に関する知識が乏しいため、早期に適切な解決ができなくなっているのではないか、ということである。
ブラック職場根絶は、政府の「働き方改革」でも議論されている。全ての労働者が、理不尽な労働状態から解放され、生き生きと仕事ができる社会の構築に向けて労使が協調していくことが大切であると痛感させられた。
この本を読んで感じたのは、使用者も労働者も、労働法に関する知識が乏しいため、早期に適切な解決ができなくなっているのではないか、ということである。
ブラック職場根絶は、政府の「働き方改革」でも議論されている。全ての労働者が、理不尽な労働状態から解放され、生き生きと仕事ができる社会の構築に向けて労使が協調していくことが大切であると痛感させられた。
2017年12月7日に日本でレビュー済み
雇用する側も雇用される側も「労働法」についての理解が不足している...そんなことをじっくり
考えさせてくれます。
裁判に勝ったあとでも復職がむずかしいとあるところでは、職場の人間関係などの精神的なハー
ドルの高さ...これは理解できてたのですが...解雇事件の場合、裁判で勝利しても、強制執行すること
ができるのは賃金の支払いで、会社に職場と仕事を用意させることを強制できない...労働者には就労
請求権がないため。ここは、まったく知識としてありませんでした。
著者の笹山さんご自身が、「おわりに」で書かれているとおり、笹山さんご自身の経験に基づく
もので異論や反論もありはするでしょうが、「労働法」に疎い私自身は、とても勉強になりました。
考えさせてくれます。
裁判に勝ったあとでも復職がむずかしいとあるところでは、職場の人間関係などの精神的なハー
ドルの高さ...これは理解できてたのですが...解雇事件の場合、裁判で勝利しても、強制執行すること
ができるのは賃金の支払いで、会社に職場と仕事を用意させることを強制できない...労働者には就労
請求権がないため。ここは、まったく知識としてありませんでした。
著者の笹山さんご自身が、「おわりに」で書かれているとおり、笹山さんご自身の経験に基づく
もので異論や反論もありはするでしょうが、「労働法」に疎い私自身は、とても勉強になりました。