古代の四大発明「紙・印刷・火薬・羅針盤」がすべて中国起源であるのは周知の常識。しかし、古代世界における中国科学技術の優位性はこれにとどまらない。著者は「現代世界を支える基礎的な発明発見の半分以上が中国に由来する」と断言する。
本書は農業・天文学・工学・医学・数学・技術から戦争まで11のカテゴリー別に、中国起源の科学・技術の数々をこれでもかとばかり羅列し、それを証明している。あまりにも多岐にわたり項目も多いから、最終的にいえるのは「半分以上が・・・」という言い方は遠慮にすぎるということだ。
大げさかもしれないが、現代世界のシステムはほとんどすべて中国文明の成果の上に築かれているのだ。「銃・病原菌・鉄」の著者、ジャレド・ダイアモンドが「西欧は15世紀まで世界史に何の貢献もしていない」と断言したのは当然だ。基本的な発明で中国起源で“ない”ものは、「ねじ」「歯車」「ホイール」ぐらいではないか。
本書は一言でいえばジョセフ・ニーダム(1900ー1995)の大著「中国の科学と文明」のダイジェスト版。もちろんニーダムのお墨付きで、序文はニーダムが書いている。
原著(ケンブリッジ大学出版局)は全7巻の構想で1954年に第一巻が出たが、2008年時点で依然刊行が続いている状態だから、ニーダム本でまだ刊行されていない部分(原著では火薬・鉄砲の発明にまだ触れていない)に言及していることでもあり、ダイジェストにも大きな価値がある。
「中国の科学と文明」の出版は西欧中心主義に痛撃を与えた。中国には西欧に1000年以上先行する科学技術がたくさんあったから、1840年のアヘン戦争の時点でも世界のGDPの3分の1を中国が占めていたことが納得できる。
序文でニーダムは「ではなぜ、科学革命=近代科学が中国で成立せず、ヨーロッパから生まれたのか」と問い、西欧と中国の封建制の質の違いを最大の理由としている。
中国封建制の特徴は官僚主義的封建制であること。その官僚機構の複雑巧緻で巨大なことはヨーロッパと比べることもできないほどだが、その官僚組織が初期段階では科学の発展を大いに援助し、後期になると強引に押さえ込んだと見ている。このあたりの見解はジャレド・ダイヤモンドの見方と比較すると面白いと思う。
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図説中国の科学と文明 単行本 – 1992/2/1
- 本の長さ429ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日1992/2/1
- ISBN-104309222145
- ISBN-13978-4309222141
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登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (1992/2/1)
- 発売日 : 1992/2/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 429ページ
- ISBN-10 : 4309222145
- ISBN-13 : 978-4309222141
- Amazon 売れ筋ランキング: - 769,609位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2002年4月26日に日本でレビュー済み
「今世紀最大の知的業績のひとつ」「その壮大さはひとつの博物館である」等と賛辞される7巻セットの廉価ダイジェスト版が本書である。
とは云っても、本書自体かなりのボリュームがあり、次から次へと纏綿と続く中国起源の発明群に「ああ、大昔、ほんとうにあなた方はすごかったんですね。いや、すごすぎたんですね。そして、それら発明の多くを忘れてしまったのはなんて贅沢なことなんでしょう」とお腹いっぱいになってきて、なかなか一気に読める代物ではないので、今では、ときおり、てきとうに頁を開いたところを読むぐらいにしています。
とは云っても、本書自体かなりのボリュームがあり、次から次へと纏綿と続く中国起源の発明群に「ああ、大昔、ほんとうにあなた方はすごかったんですね。いや、すごすぎたんですね。そして、それら発明の多くを忘れてしまったのはなんて贅沢なことなんでしょう」とお腹いっぱいになってきて、なかなか一気に読める代物ではないので、今では、ときおり、てきとうに頁を開いたところを読むぐらいにしています。
2004年6月5日に日本でレビュー済み
中国の歴史や文化に興味がある人が、まず必ず読まなくてはならいない書物でしょう。
読んでいるうちに、いろいろなものの起源が中国から生まれたことが分かり、我々が現在享受している西洋的な文化でさえ、中国が一歩リードしていたことが確認できます。そして、自分の中国好きを真から肯定できる満足な本です。
あまりに多くのものが中国起源であるので、むしろこの著者がかなりの中国びいきではないかと疑ってしまいます。しかし、この本の元となった書物の著者ニーダム氏は科学的頭脳を持つ真の学者です。
読んでいるうちに、いろいろなものの起源が中国から生まれたことが分かり、我々が現在享受している西洋的な文化でさえ、中国が一歩リードしていたことが確認できます。そして、自分の中国好きを真から肯定できる満足な本です。
あまりに多くのものが中国起源であるので、むしろこの著者がかなりの中国びいきではないかと疑ってしまいます。しかし、この本の元となった書物の著者ニーダム氏は科学的頭脳を持つ真の学者です。