化石になってしまった初期人類、文字のない時代に生きた人々の病気については、遺された骨から探索する方法がある。「古病理学」という方法である。ただし、「プロローグ」に書かれている通り、「骨そのものに病巣を残さない病気にはまったくお手上げである」というのも事実だろう。
ここのところ、古代や歴史時代に生きた人々の病についていろいろと知りたく思っていて、そんな時に出版されたこの本をすぐに購入した。内容紹介にある通り、実際の事例を挙げながらの病(特に結核、梅毒、腫瘍、その他伝染病など)や怪我の痕跡についての記述は大変詳しい。図や写真があるのもうれしい。ただ、医学的知識の乏しい自分にはかなり理解が難しい点もあったのは事実だ。そんな時に役立ったのが、巻末に付録として載っている骨についての詳しい説明及び、疾病カテゴリー一覧表だった。
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骨から見た日本人 古病理学が語る歴史 (講談社学術文庫) 文庫 – 2010/1/12
鈴木 隆雄
(著)
骨は情報の宝庫である。古病理学は古人骨を研究対象とし、現代の医学で診断し、その個体の病気の経過と症状を明らかにする。骨にあらわれたヒト化の道のり、縄文人の戦闘傷痕と障害者介護、弥生時代以降の結核流行、江戸時代に猖獗をきわめた梅毒と殿様のガン……。発掘された人骨を丹念に調べあげ、過去の社会構造と各時代の与件とを明らかにする。(講談社学術文庫)
- 本の長さ296ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2010/1/12
- ISBN-104062919788
- ISBN-13978-4062919784
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2010/1/12)
- 発売日 : 2010/1/12
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 296ページ
- ISBN-10 : 4062919788
- ISBN-13 : 978-4062919784
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,012,914位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,322位講談社学術文庫
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
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2017年11月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
考古学や人類学に興味を持ったので2017年10月に購入。
医学用語が使われていますが、解剖や組織をかじった程度であれば十分わかるし、もしくはちょいちょいネットで調べればわかる程度なので特に気にするほどではないと思います。
それよりもところどころ、表現が冗長であったり、また客観性に疑問を感じるところがありました。本筋にはなんら影響のない書き出しの部分などですが、そういうところがちょっと残念でした。しかし著者が乗っているところの肩をもつ医学という巨人の目は確かなので、本書の示唆する結論なり話の内容は、特に私のような初心者には読み応えがあると思います。
医学用語が使われていますが、解剖や組織をかじった程度であれば十分わかるし、もしくはちょいちょいネットで調べればわかる程度なので特に気にするほどではないと思います。
それよりもところどころ、表現が冗長であったり、また客観性に疑問を感じるところがありました。本筋にはなんら影響のない書き出しの部分などですが、そういうところがちょっと残念でした。しかし著者が乗っているところの肩をもつ医学という巨人の目は確かなので、本書の示唆する結論なり話の内容は、特に私のような初心者には読み応えがあると思います。
2018年9月19日に日本でレビュー済み
本書を読むまで「古病理学」を知らなかった。アマゾンで検索しても完全一致する本は
他に二冊しかない。ずいぶんと地味な分野である。だが、発掘された骨、化石化した骨に
残された傷や病気の痕跡を調べて、当時の社会状況を推測するという研究は、とても
興味深く思われるし、あって当然のような気がする。
ただ本書を読んでわかったのは、骨から読み取れる情報は残念ながら限定的であり、
他の関連する学術分野と紐づけないと面白味がわからないことだ。本書でも病理学、
歴史学、生物学の知見と関連づけながら読み解くことで、読み物として成立している。
ここまでわかるのかという驚きと、ここまでしかわからないのかという諦念の間を
行き来する微妙な読み心地だ。広くお薦めするのはためらわれる。歴史好きの方、
病気好き?の方は、どうぞ。
他に二冊しかない。ずいぶんと地味な分野である。だが、発掘された骨、化石化した骨に
残された傷や病気の痕跡を調べて、当時の社会状況を推測するという研究は、とても
興味深く思われるし、あって当然のような気がする。
ただ本書を読んでわかったのは、骨から読み取れる情報は残念ながら限定的であり、
他の関連する学術分野と紐づけないと面白味がわからないことだ。本書でも病理学、
歴史学、生物学の知見と関連づけながら読み解くことで、読み物として成立している。
ここまでわかるのかという驚きと、ここまでしかわからないのかという諦念の間を
行き来する微妙な読み心地だ。広くお薦めするのはためらわれる。歴史好きの方、
病気好き?の方は、どうぞ。
2014年2月2日に日本でレビュー済み
本書は古人骨から分かる古病理を通じて日本の各時代の時代的特徴を解き明かしています。
特に印象に残ったのは、2点。
一つめは縄文時代の矢じりの刺さった人骨の説明。
一般に縄文時代は身分や貧富の差もなく、蓄えもなかったので、戦争のない平和な時代だったような印象でしたが、この時代にも人と人とがかなりの頻度で殺し合っていたことを古人骨は教えてくれています。人の世にユートピアはない、攻撃は人間の本性なのかもしれないと改めて考えさせられました。
二つめは江戸時代の梅毒に冒された人骨の話。
江戸時代、特に大都市の江戸では性病である梅毒が猖獗を極め、骨まで冒された重症者が江戸の全人口の5%以上、さらに何らかの形で梅毒に罹患した者は人口の半数近くに及ぶ可能性もあったというショッキングな内容でした。
江戸時代の江戸は男女比が極端にいびつで、あぶれた男たちは売春婦(女郎)のもとに通い性欲を処理していた。その売春婦の幕末の梅毒罹患率は80%近かったそうです。
売春婦たちが人々から蔑まれてきたのは、この梅毒の恐怖も影響しているのかも知れない。病気に対する恐れ、病気に伴う穢れ、そういった諸々を弱い立場にある売春婦のみに負わせる。そうすることにより男たちは恐れを一時忘れ、穢れからも逃れる。それ故にこそ、人々は一層のこと売春婦を蔑まなければならない。
そんな構造が垣間見えるようでした。
人々に蔑まれ、梅毒により顔は崩れ、脳神経を冒され、骨まで変形して死んでいった多くの売春婦たちが歴史的事実として存在したことを思うとき、人の世の不条理を思わざるを得ません。
特に印象に残ったのは、2点。
一つめは縄文時代の矢じりの刺さった人骨の説明。
一般に縄文時代は身分や貧富の差もなく、蓄えもなかったので、戦争のない平和な時代だったような印象でしたが、この時代にも人と人とがかなりの頻度で殺し合っていたことを古人骨は教えてくれています。人の世にユートピアはない、攻撃は人間の本性なのかもしれないと改めて考えさせられました。
二つめは江戸時代の梅毒に冒された人骨の話。
江戸時代、特に大都市の江戸では性病である梅毒が猖獗を極め、骨まで冒された重症者が江戸の全人口の5%以上、さらに何らかの形で梅毒に罹患した者は人口の半数近くに及ぶ可能性もあったというショッキングな内容でした。
江戸時代の江戸は男女比が極端にいびつで、あぶれた男たちは売春婦(女郎)のもとに通い性欲を処理していた。その売春婦の幕末の梅毒罹患率は80%近かったそうです。
売春婦たちが人々から蔑まれてきたのは、この梅毒の恐怖も影響しているのかも知れない。病気に対する恐れ、病気に伴う穢れ、そういった諸々を弱い立場にある売春婦のみに負わせる。そうすることにより男たちは恐れを一時忘れ、穢れからも逃れる。それ故にこそ、人々は一層のこと売春婦を蔑まなければならない。
そんな構造が垣間見えるようでした。
人々に蔑まれ、梅毒により顔は崩れ、脳神経を冒され、骨まで変形して死んでいった多くの売春婦たちが歴史的事実として存在したことを思うとき、人の世の不条理を思わざるを得ません。