哺乳類の起源と進化が書かれた本を読みたいと思い探したところ、この10年くらいで出版されたそういった分野の本は意外と少なく、本書くらいしか選択肢がなかったので購入した。読んでみると、興味深い内容がたくさん盛り込まれていたが、なんとも文章が読みにくい。著者は、獣医学の大学教授として家畜育種学を教え、泌乳生理学を研究していたかたである。だから進化学を専門としていたわけではなく、大学での講義や研究とは別に、著者が勉強して得た知識がたくさん披露されている。「はじめに」で、「理系の研究者は論文作成で結果を正確に文章化することに気を遣い、分かりやすさを重視することはほとんどない。筆者も例外でなかったようで、その性癖にブルーバックス出版部、なかでも熊川佳子さんからの助言で気づくことが多かった。努力したつもりだが、読みやすさについては読者の皆様に判断を仰ぐことにする。」と述べている。私見ではあるが、分かりやすさを重視することは理系の文章としてとても大切なことであるし、それ以前に、内容が正確に文章化されていないのではないか、という疑念を感じることが多かった。事実の記述のあとに、筆者のコメントのような文章が入るのだが、意味不明の文章が散見された。内容としてはおもしろいことがたくさん書かれているので、もったいない話ではある。進化全般や人類の進化を書くすぐれた書き手はたくさんいそうだが、哺乳類の進化の分野は意外とニッチなのかもしれない。
本書は下記のような構成になっている。
「第一部 遺伝の仕組みにあった進化の根源」では、進化全般のメカニズムを遺伝学から説明している。
「第二部 新天地を求めた動物」では、水中で生まれた動物が水中から陸上へ移動したいきさつや、鳥類や哺乳類の出現と進化について説明している。
「第三部 進化の究極-乳腺と泌乳」では、著者の専門である乳と乳腺についてくわしく解説している。
哺乳類の進化について、とくに興味をもったポイントをまとめてみた。
・哺乳類の最大の特徴は胎盤と乳腺にある。哺乳類は最初は卵生であり、有袋類で初めて胎生となり子を出産、乳頭が出現した。
・単孔類のカモノハシは2億年前に出現し、有胎盤類と異なる方向に進化した。タマゴを産むことでハ虫類にちかく、乳で子育てすることで哺乳類にちかい。ハ虫類から進化したことを示す生きた化石である。親にはまだ乳頭と乳房はなく、乳区というものが腹部に一対存在する。孵化するころに乳腺が完成する。この部位からしみ出したクリーム状の乳が毛の密集しているところに集まり、それを子がなめるという最も原始的な哺乳様式をとっている。
・有袋類のカンガルーの妊娠期間はわずか約30日で、胎盤が不完全で未熟児状態で出産する。生まれた子は、育児嚢に入り乳頭に吸い付く。有袋類では卵黄嚢を通じて母体と物質交換をおこなう卵黄嚢胎盤を有するため、ヘソはない。
・有胎盤類(真獣類)において、外細胞塊から胎盤を誘導する遺伝子がPou5flである。ハ虫類、鳥類、単孔類、有袋類にあるPou2という遺伝子が重複してできた。Pou5flと遺伝子転写因子のCdx2が協働することで胎盤形成にはたらく。
・汗腺には、脂肪、タンパク質、糖分、その他微量要素を含んだ分泌物を出して、皮膚の保護と体毛の維持にはたらくアポクリン腺(皮脂腺)と、99%の水分を出すエクリン腺(いわゆる汗腺)がある。アポクリン腺が乳腺の基になった。プロラクチンというホルモンは、魚類にも存在し母性行動を誘発する。鳥類では抱卵中に高濃度となる。ハトではそ嚢乳で子育てするが、これはプロラクチンの刺激で作られる乳様物質である。哺乳類ではプロラクチンが乳成分の合成を調節している。
・哺乳類は生後、短期間で強度を備えた骨にするために、カルシウムとリン酸を大量に与える必要があった。これらの運搬をカゼインが負っている。ハ虫類の単弓類のキノドン類はカゼインの祖先型遺伝子を有していた。カゼインは元々、骨、歯、卵殻にカルシウムを運んでいた。哺乳類は祖先型カルシウム結合性タンパク質遺伝子をカゼイン遺伝子に進化させ乳腺で発現させた。
・乳には乳糖が存在するが、αラクトアルブミンが乳糖合成に関与する。ニワトリの皮膚や卵白には殺菌作用を持つリゾチームが存在する。哺乳類はこれの遺伝子重複、それに続く塩基置換によってαラクトアルブミンを進化させた。
・マウス乳腺にはアミノ酸酸化酵素があり、遊離アミノ酸を分解して過酸化水素を発生させる。牛乳中にはこの酵素はなく、未知の低分子化合物が過酸化水素を発生させる。できた過酸化水素はただちに過酸化水素分解酵素によって、チオシアン酸からチオシアナイとなり、微量で強い殺菌作用を示す。
・ラマルクの獲得形質については、DNAに記憶されている潜在能力の遺伝によって説明できるとしているが、正直私には意味が分からなかった。
・本来ヒトは肉食性であったが、雑食性に変化した。ヒトを含めた真猿類では、ビタミンC合成酵素であるグロノラクトン酸化酵素が働きを止めた。それでビタミンCを野菜や果実から摂るようになった。ヒトは植物からビタミンCを摂るようになり、一緒にデンプンやセルロースも摂取することになった。セルロースは栄養にならなかったが、デンプンを消化する酵素アミラーゼを持っていた。胃はデンプンを消化できず、滞在時間が長いために満腹感が持続することも受け入れられる要因となった。
・ヒトはこの200年間で、10億人から70億人に増えた。人類は多くの動物を絶滅させてきたが、ヒトの人口爆発は食糧不足を招き、自らの滅亡に導くことを著者は恐れている。
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哺乳類誕生 乳の獲得と進化の謎 (ブルーバックス) 新書 – 2015/1/21
酒井 仙吉
(著)
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生命の誕生した楽園である水中を追われ、過酷な陸上に避難した哺乳類の先祖たち。彼らはどのように環境に適応し、どうしてここまで繁栄できたのか? その秘密は「乳」というシステムにあった。生物の歴史を丹念にたどり、哺乳類、そして人という生き物の本質に迫る。人が生物の頂点に達するまでの壮大な進化の物語。(ブルーバックス・2015年1月刊)
- 本の長さ264ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2015/1/21
- 寸法11.5 x 1.2 x 17.3 cm
- ISBN-104062578980
- ISBN-13978-4062578981
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2015/1/21)
- 発売日 : 2015/1/21
- 言語 : 日本語
- 新書 : 264ページ
- ISBN-10 : 4062578980
- ISBN-13 : 978-4062578981
- 寸法 : 11.5 x 1.2 x 17.3 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 81,927位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2017年7月2日に日本でレビュー済み
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2015年2月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は全三部構成になっているのだが、第一部と第二部以降では、随分と趣が違うように感じる。第一部は遺伝学の、第二部以降は生物の進化史と生物学の本を読んでいるような趣があるのだ。
その『第一部 遺伝の仕組みにあった進化の根源』では、随所で、ゲノム、染色体、DNA、遺伝子と、それらを前提とした遺伝の仕組みについて、かなり深い理論的な解説がされている。それらがしっかりと理解できれば面白く読める内容だとは思うのだが、特にこうした分野の本を読むのが初めてという方は、理解に苦労されるところがあるかもしれない。ちなみに、私の場合は、本書の前にDNA関係の入門書を読んでいたものの、頭を悩ませながら読み返して、ようやく何とかという感じだった。
『第二部 新天地を求めた動物』は、第一部の内容を踏まえたものではあるものの、生物の誕生から哺乳類の誕生・進化に至る生物の進化史と、各生物で起こった具体的な進化の詳細につい解説しているので、第一部の理論的な解説が理解できていなくても、面白く読める内容になっていると思う。
『第三部 進化の究極ー乳腺と泌乳』は、本書のタイトル名を見ても分かるように、本書の肝となる部分だ。ただ、これが筆者の研究テーマだということで力が入るのは分かるのだが、泌乳制御機構についての非常に難解な解説を典型としたその内容は、もはや乳の獲得が哺乳類を繁栄させたとする本書の趣旨を超えた専門的なものとなっており、正直いって、「素人相手に何もここまで」とは思ってしまう。
そんな中にあって、私が最も強烈なインパクトを受けたのが、締めの『第一一章 進化はヒトに何をもたらしたか』だった。筆者はその中で、人類には好戦的性格が遺伝するとしなければならないようだとし、人類が絶滅させてきた生物たちや、アメリカバイソンが60年間で7,500万頭からわずか200頭余りに激減したという実例などを挙げ、地球の歴史でこれまでに生物の大量絶滅が五回あったが、六回目は人類が原因となり、その矛先は人類自身にも向けられるだろうと警鐘を鳴らしているのだ。
その『第一部 遺伝の仕組みにあった進化の根源』では、随所で、ゲノム、染色体、DNA、遺伝子と、それらを前提とした遺伝の仕組みについて、かなり深い理論的な解説がされている。それらがしっかりと理解できれば面白く読める内容だとは思うのだが、特にこうした分野の本を読むのが初めてという方は、理解に苦労されるところがあるかもしれない。ちなみに、私の場合は、本書の前にDNA関係の入門書を読んでいたものの、頭を悩ませながら読み返して、ようやく何とかという感じだった。
『第二部 新天地を求めた動物』は、第一部の内容を踏まえたものではあるものの、生物の誕生から哺乳類の誕生・進化に至る生物の進化史と、各生物で起こった具体的な進化の詳細につい解説しているので、第一部の理論的な解説が理解できていなくても、面白く読める内容になっていると思う。
『第三部 進化の究極ー乳腺と泌乳』は、本書のタイトル名を見ても分かるように、本書の肝となる部分だ。ただ、これが筆者の研究テーマだということで力が入るのは分かるのだが、泌乳制御機構についての非常に難解な解説を典型としたその内容は、もはや乳の獲得が哺乳類を繁栄させたとする本書の趣旨を超えた専門的なものとなっており、正直いって、「素人相手に何もここまで」とは思ってしまう。
そんな中にあって、私が最も強烈なインパクトを受けたのが、締めの『第一一章 進化はヒトに何をもたらしたか』だった。筆者はその中で、人類には好戦的性格が遺伝するとしなければならないようだとし、人類が絶滅させてきた生物たちや、アメリカバイソンが60年間で7,500万頭からわずか200頭余りに激減したという実例などを挙げ、地球の歴史でこれまでに生物の大量絶滅が五回あったが、六回目は人類が原因となり、その矛先は人類自身にも向けられるだろうと警鐘を鳴らしているのだ。
2021年5月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
古本屋に行く手間もかけずに素晴らしい本を入手出来ました。
2016年12月22日に日本でレビュー済み
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久々のブルーバックス。高校や大学教養時代によく読んだものだ。講義内容のアップデートネタとして乳の獲得を知りたかったが今さら専門外の専門書を一から勉強する時間がないのでアンチョコな道として本書を選んだ。
しかし、かなりの数の専門用語が広範囲に散りばめられ、予備知識なしの初学者には参考書なしには読めないだろう。アンチョコどころか難解の部類に入る本である。
とは言うものの、生物学を大学まで学んだものなら読みこなせるだろう。学部高学年か専門外の生物学者むけ。
内容は、タイトルの乳の進化をはるかに飛び越え、無生物から生命の誕生、そこから脊椎動物が生まれ、いわゆる魚類、両生類、爬虫類、哺乳類、鳥類の進化史を解剖学、生理学、行動学的にレビューし、最後は人類史に及び、現生人類の絶滅と新人類の進化の可能性でくくられる、という壮大なストーリー展開。よくもこれほどまで、広範囲で多様な学問分野や生物や進化の知識を収集し整理してまとめたものだと感心する。典型的な東大秀才型の著者であり、脳の情報処理能力が我々凡人とは元から違うのだろう。読んでいて、ああそういう話題があったがそういう事だったのか、と膝を打つ事しばしば。
ただし、一説としてあげられていることをあたかも唯一の事実のように記述されることしばしば。また、余りに話題が広範囲なので、著者の専門外の箇所では思い込みや多少の誤りも散見されるが、決定的におかしいと言うものは少ない。それにもかかわらず私が理解できなかったのが、ラマルク的進化の積極的肯定である。もちろん、ダーウィン的な自然選択も肯定している。ラマルク的進化の肯定の根拠として、遺伝子に基盤をおく潜在的な能力、と言う言葉を使っているが、私には理論的にダーウィン的進化論と何処が異なるのか良く理解できなかった。わたしが本書で一番引っかかったのがこのところである。著者は育種を扱う畜産学が専門なので、もしかするとルイセンコ的進化論の影響なのかもしれない。
結局、本書では、哺乳ないし乳の進化に関しては、刺身のツマ程度の記述しかなく、四足動物の進化史の中の一部を構成するにすぎない。しかし、さすが専門家、哺乳類の繁殖と哺乳の進化は生化学レベルから細胞、解剖レベルまで詳細に記述され、目からウロコの知見も得られた。
以上、生物学にある程度の知識があるが、哺乳類の進化、特に繁殖の進化、に疎い人には参考書として勧める。ただし原著が不明なので、事実関係の確認やさらに知りたい場合は、自分で検索して一つ一つあたるしかない。
しかし、かなりの数の専門用語が広範囲に散りばめられ、予備知識なしの初学者には参考書なしには読めないだろう。アンチョコどころか難解の部類に入る本である。
とは言うものの、生物学を大学まで学んだものなら読みこなせるだろう。学部高学年か専門外の生物学者むけ。
内容は、タイトルの乳の進化をはるかに飛び越え、無生物から生命の誕生、そこから脊椎動物が生まれ、いわゆる魚類、両生類、爬虫類、哺乳類、鳥類の進化史を解剖学、生理学、行動学的にレビューし、最後は人類史に及び、現生人類の絶滅と新人類の進化の可能性でくくられる、という壮大なストーリー展開。よくもこれほどまで、広範囲で多様な学問分野や生物や進化の知識を収集し整理してまとめたものだと感心する。典型的な東大秀才型の著者であり、脳の情報処理能力が我々凡人とは元から違うのだろう。読んでいて、ああそういう話題があったがそういう事だったのか、と膝を打つ事しばしば。
ただし、一説としてあげられていることをあたかも唯一の事実のように記述されることしばしば。また、余りに話題が広範囲なので、著者の専門外の箇所では思い込みや多少の誤りも散見されるが、決定的におかしいと言うものは少ない。それにもかかわらず私が理解できなかったのが、ラマルク的進化の積極的肯定である。もちろん、ダーウィン的な自然選択も肯定している。ラマルク的進化の肯定の根拠として、遺伝子に基盤をおく潜在的な能力、と言う言葉を使っているが、私には理論的にダーウィン的進化論と何処が異なるのか良く理解できなかった。わたしが本書で一番引っかかったのがこのところである。著者は育種を扱う畜産学が専門なので、もしかするとルイセンコ的進化論の影響なのかもしれない。
結局、本書では、哺乳ないし乳の進化に関しては、刺身のツマ程度の記述しかなく、四足動物の進化史の中の一部を構成するにすぎない。しかし、さすが専門家、哺乳類の繁殖と哺乳の進化は生化学レベルから細胞、解剖レベルまで詳細に記述され、目からウロコの知見も得られた。
以上、生物学にある程度の知識があるが、哺乳類の進化、特に繁殖の進化、に疎い人には参考書として勧める。ただし原著が不明なので、事実関係の確認やさらに知りたい場合は、自分で検索して一つ一つあたるしかない。
2015年10月21日に日本でレビュー済み
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わかりやすいよい本だと思う。そして楽しみながら進化を感じながら、そして自分たちが今いるんだと感じさせてくれる素晴らしい本だと思う。
2015年9月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
哺乳類がどんな生き物か、乳の獲得がこれほど大事とは知らなかった。
但し、専門的なことが多く、理解は7割程度であった。
但し、専門的なことが多く、理解は7割程度であった。
2015年3月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
母乳の進化的意義、母乳を作るメカニズムがわかりやすく解説されており、とても良い本だと思う。
母乳の重要性については認識したことがなかったので、この本で気づかされた。
母乳の重要性については認識したことがなかったので、この本で気づかされた。
2016年4月29日に日本でレビュー済み
内容は★★★★★,分かり易さ★★
前書きで,初めから分かり難いことを言い訳しています。「理系の研究者は…分かりやすさを重視することはほとんどない。筆者も例外ではなかった…努力したつもりだが,読みやすさについては読者の皆様に判断を仰ぐことにする。」
判断します。読み難いです。
文章が分かり難いうえに,図表が少ない。減数分裂の説明図,あっても極めて簡略な模式図で,もうちょっと分かり易くならんかなと思います。wikipediaの絵の方が分かり易ですよ。
鳥類の進化の説明で,呼吸器の気嚢の機能の説明なんて,文章だけで全然わかりません。これこそ絵図を入れて欲しいですね。
ところが,単なるニワトリの頭部の絵が載っているのです。体温を冷却するトサカを示すために。トサカの外観なら,絵はなくても分かるんですけどね。このちぐはぐさが何とも印象的。
遺伝子の説明で,二胚葉動物,内胚葉,外胚葉,三胚葉動物ということばが突然出てくるところなど,ついていけません。あとがきによると,「新しい高校生物の教科書」(ブルーバックス)に記載された用語は解説しないという立場なので,このレベルの知識がない読者は,他の何かを参照しないと,理解できない構造となっています。
そして,新しい高校生物の教科書にも載っていない単孔類という言葉も突然出てきます。カンガルーが有袋類だということまでは知っていましたが,カモノハシが単孔類というのも常識なんですかね。私は知りませんでした。
内容は興味深いです。
・哺乳類は窒素の排出に尿素を使う。尿酸を排出する爬虫類より尿素を排出する点で,両生類に近い。
・乳のすごいところは全ての栄養素が水溶性であること。脂肪が水溶性なのは,細胞膜で覆われているから。
・乳は糖分を,高濃度では細胞に有害なブドウ糖でなく,乳糖で含有する。
などなど。
生物進化全般に雑多な興味がある読者には,十分満足できる本です。
前書きで,初めから分かり難いことを言い訳しています。「理系の研究者は…分かりやすさを重視することはほとんどない。筆者も例外ではなかった…努力したつもりだが,読みやすさについては読者の皆様に判断を仰ぐことにする。」
判断します。読み難いです。
文章が分かり難いうえに,図表が少ない。減数分裂の説明図,あっても極めて簡略な模式図で,もうちょっと分かり易くならんかなと思います。wikipediaの絵の方が分かり易ですよ。
鳥類の進化の説明で,呼吸器の気嚢の機能の説明なんて,文章だけで全然わかりません。これこそ絵図を入れて欲しいですね。
ところが,単なるニワトリの頭部の絵が載っているのです。体温を冷却するトサカを示すために。トサカの外観なら,絵はなくても分かるんですけどね。このちぐはぐさが何とも印象的。
遺伝子の説明で,二胚葉動物,内胚葉,外胚葉,三胚葉動物ということばが突然出てくるところなど,ついていけません。あとがきによると,「新しい高校生物の教科書」(ブルーバックス)に記載された用語は解説しないという立場なので,このレベルの知識がない読者は,他の何かを参照しないと,理解できない構造となっています。
そして,新しい高校生物の教科書にも載っていない単孔類という言葉も突然出てきます。カンガルーが有袋類だということまでは知っていましたが,カモノハシが単孔類というのも常識なんですかね。私は知りませんでした。
内容は興味深いです。
・哺乳類は窒素の排出に尿素を使う。尿酸を排出する爬虫類より尿素を排出する点で,両生類に近い。
・乳のすごいところは全ての栄養素が水溶性であること。脂肪が水溶性なのは,細胞膜で覆われているから。
・乳は糖分を,高濃度では細胞に有害なブドウ糖でなく,乳糖で含有する。
などなど。
生物進化全般に雑多な興味がある読者には,十分満足できる本です。