シリアから見たイスラム?世界
今まで全く知らなかった見方でした。
大変に恥ずかしいですが、勉強になりました。
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報道されない中東の真実 動乱のシリア・アラブ世界の地殻変動 単行本 – 2014/8/20
国枝昌樹
(著)
シリア問題を契機として、アラブ諸国は合従連衡と離反を繰り返してうごめいている。
欧米・日本メディアが報道しない、中東の"真実"とは何か。展望は開けるのか。
激変している中東各国の現状を元シリア大使が取材・解説。
【目次】
はしがき
[第一章 シリア問題の過去・現在・未来]
●民衆蜂起第1幕――シリア全土に広がる抗議のデモ
●民衆蜂起第2幕――国際社会の介入と悪化する情勢
●民衆蜂起第3幕――窮地のシリア政府
●民衆蜂起第4幕――反転攻勢に出る政府
[第二章 反体制派、それぞれの思惑]
●シリア軍――欧米諸国の支援と期待を背負う
●イスラミック戦線――非アルカーイダ系イスラム主義グループ
●ヌスラ戦線――アルカーイダ系武装グループ
●イラク・大シリア・イスラム国家――アルカーイダを見限ってカリフを頂く国家創設をもくろむ
[第三章 宗教・宗派対立の真実]
●スンニー派シリア人――割を食わされた人々
●アラウィ派シリア人――謎に包まれた存在
●シーア派シリア人――殻に籠もる人びと
●シリア人キリスト教徒――歴史に翻弄される人々
[第四章 アラブ世界をめぐる関係諸国の戦略]
●ロシア――シリア政府を支援する大国
●イラン――シーア派ではなく、国益重視の相互関係
●イラク――国家分裂の危機に瀕する、新たな中東の火種
●レバノン――アサド政権と運命をともにするヒズボッラ
●米国、英国そしてフランス――シリア制裁を先導する国々の不確かさ
●カタール――金は力、リージョナル・パワーを目指す
●サウジアラビア――老舗の国王が率いるアラブの盟主
●トルコ――「ゼロ・プロブレム外交」から「ゼロ・フレンド外交」へ
●イスラエル――安全を脅しうる「漁夫の利」
●国連――仲介機能不全に陥った事務総長
あとがき
欧米・日本メディアが報道しない、中東の"真実"とは何か。展望は開けるのか。
激変している中東各国の現状を元シリア大使が取材・解説。
【目次】
はしがき
[第一章 シリア問題の過去・現在・未来]
●民衆蜂起第1幕――シリア全土に広がる抗議のデモ
●民衆蜂起第2幕――国際社会の介入と悪化する情勢
●民衆蜂起第3幕――窮地のシリア政府
●民衆蜂起第4幕――反転攻勢に出る政府
[第二章 反体制派、それぞれの思惑]
●シリア軍――欧米諸国の支援と期待を背負う
●イスラミック戦線――非アルカーイダ系イスラム主義グループ
●ヌスラ戦線――アルカーイダ系武装グループ
●イラク・大シリア・イスラム国家――アルカーイダを見限ってカリフを頂く国家創設をもくろむ
[第三章 宗教・宗派対立の真実]
●スンニー派シリア人――割を食わされた人々
●アラウィ派シリア人――謎に包まれた存在
●シーア派シリア人――殻に籠もる人びと
●シリア人キリスト教徒――歴史に翻弄される人々
[第四章 アラブ世界をめぐる関係諸国の戦略]
●ロシア――シリア政府を支援する大国
●イラン――シーア派ではなく、国益重視の相互関係
●イラク――国家分裂の危機に瀕する、新たな中東の火種
●レバノン――アサド政権と運命をともにするヒズボッラ
●米国、英国そしてフランス――シリア制裁を先導する国々の不確かさ
●カタール――金は力、リージョナル・パワーを目指す
●サウジアラビア――老舗の国王が率いるアラブの盟主
●トルコ――「ゼロ・プロブレム外交」から「ゼロ・フレンド外交」へ
●イスラエル――安全を脅しうる「漁夫の利」
●国連――仲介機能不全に陥った事務総長
あとがき
- 本の長さ320ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2014/8/20
- 寸法18.8 x 12.8 x 18.8 cm
- ISBN-104023312924
- ISBN-13978-4023312920
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登録情報
- 出版社 : 朝日新聞出版 (2014/8/20)
- 発売日 : 2014/8/20
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 320ページ
- ISBN-10 : 4023312924
- ISBN-13 : 978-4023312920
- 寸法 : 18.8 x 12.8 x 18.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 858,595位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 6,181位外交・国際関係 (本)
- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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2014年10月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
最初から意外かつスリリング。シリアは恐ろしい独裁国家と思っていたが、その背景には先代アサド時代からのムスリム同胞団との闘争があった。最初の住民蜂起が平和的なデモに対する当局の弾圧という通説も、様々な証言や武器の密輸等の状況から嘘であることが強く示唆される。
トルコやサウジアラビアなどが反政府側支持で介入するが、中でもカタールは影響下のアルジャジーラも使って物心両面で支援する。それらの国同士も反目し合う。ソース未確認のアルジャジーラの情報を欧米メディアはそのまま使い、欧米各国政府もアサド政権批判を強めていく。シリア政府を悪と決めつけ腐敗した反政府勢力を支援する欧米首脳達に比べ、むしろアサド大統領の方が穏健で理性的にさえ思えてくる。
アラウィ派とかカタールの動機など、読者(私)の分からないことに構わず話は進む。1章だけで本書の6割くらい。その後、ようやく解説がつく。執筆中にシリア情勢が大きく動いたこともあろうが、章構成には見直しの余地がありそう。
このところのイラク・シリア報道の主役はイスラム国(ISIS)だが、本書では出演者の1人といった感じ。もう少し言及があっても良かった気がするが、ISIS偏重では事態を見誤るということも分かった。
トルコやサウジアラビアなどが反政府側支持で介入するが、中でもカタールは影響下のアルジャジーラも使って物心両面で支援する。それらの国同士も反目し合う。ソース未確認のアルジャジーラの情報を欧米メディアはそのまま使い、欧米各国政府もアサド政権批判を強めていく。シリア政府を悪と決めつけ腐敗した反政府勢力を支援する欧米首脳達に比べ、むしろアサド大統領の方が穏健で理性的にさえ思えてくる。
アラウィ派とかカタールの動機など、読者(私)の分からないことに構わず話は進む。1章だけで本書の6割くらい。その後、ようやく解説がつく。執筆中にシリア情勢が大きく動いたこともあろうが、章構成には見直しの余地がありそう。
このところのイラク・シリア報道の主役はイスラム国(ISIS)だが、本書では出演者の1人といった感じ。もう少し言及があっても良かった気がするが、ISIS偏重では事態を見誤るということも分かった。
2015年3月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
『シリアーアサド政権の40年史』は少々難しく読みにくかったが、この本はもう少しわかりやすく書いてある。
国枝元大使がシリアに在任中の同時期、私もシリアに滞在していて、肌感覚として国枝氏の論は納得がいくものだった。
しかし2012年当時、この論を信じる者が周りにいなかった。
相変わらずメディアに信憑性はないが、中東情勢を過去からさかのぼって正しく理解しようとするならば、この本をぜひおすすめしたい。
実際、日本語ができる知人は「反政府軍」の住民虐殺の動画を、何度か翻訳したが、日本のテレビでは「政府軍」の虐殺と報道された。
知人は翻訳の仕事を辞めた。こんなことは世には知られない。
氏の第一次資料ともいうべき、有力者からの取材は、本書にもあるように、誰かもわからない電話取材で得た情報を世界に垂れ流す(日本にも)ものとは、一線を画している。
中東問題は複雑で難しいから、メディアの言うことをただ鵜呑みにしてはならない、と思う。
国枝元大使がシリアに在任中の同時期、私もシリアに滞在していて、肌感覚として国枝氏の論は納得がいくものだった。
しかし2012年当時、この論を信じる者が周りにいなかった。
相変わらずメディアに信憑性はないが、中東情勢を過去からさかのぼって正しく理解しようとするならば、この本をぜひおすすめしたい。
実際、日本語ができる知人は「反政府軍」の住民虐殺の動画を、何度か翻訳したが、日本のテレビでは「政府軍」の虐殺と報道された。
知人は翻訳の仕事を辞めた。こんなことは世には知られない。
氏の第一次資料ともいうべき、有力者からの取材は、本書にもあるように、誰かもわからない電話取材で得た情報を世界に垂れ流す(日本にも)ものとは、一線を画している。
中東問題は複雑で難しいから、メディアの言うことをただ鵜呑みにしてはならない、と思う。
2016年7月21日に日本でレビュー済み
私はこの本は読んでいませんが、ご注意ください。
『テレビ・新聞が決して報道しないシリアの真実 (朝日文庫)』という本がこちらの本を基に改題、加筆修正されて出版されています。また改題版の方が安いです。
『テレビ・新聞が決して報道しないシリアの真実 (朝日文庫)』という本がこちらの本を基に改題、加筆修正されて出版されています。また改題版の方が安いです。
2016年1月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私は、仕事でシリア及びイスラエルに関わったことがあるため、このような関連書籍をかなり読んでいますが、現場にいた時の感覚からして、国枝さんがおっしゃっていることが一番納得がいくし、最も信頼のおけるものだと思っています。さすがは大使経験者だと思いました。これからも国枝さんが出される本に注目していきたいと思います。
2015年4月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
シリアが現在の血みどろの内戦状態に至るまでを時系列で克明に記している。アサド政権側にも一定の非があることはことは認めつつも、明らかに悪意に満ちた報道による情報操作で作られた善悪論に依らずに、客観的かつ冷静な分析で「反政府軍」とされる勢力の実態を示している。それはおおよそ「アラブの春」と美化された市民蜂起とはかけ離れた、欧米列強や周辺諸国の意を汲んだ「武装勢力」に他ならない。
そして内戦の本質は今までの歴史を踏まえた「世俗主義と宗教宗派主義の戦い」であることが看破されている。
関係諸国の立ち位置なども詳しく解説されていて、現地を良く知る元外交官ならではの視点が心強く感じられる。先に同著者の「イスラム国の正体」を読んでから読むと分かりやすいのでお薦めしたい。
そして内戦の本質は今までの歴史を踏まえた「世俗主義と宗教宗派主義の戦い」であることが看破されている。
関係諸国の立ち位置なども詳しく解説されていて、現地を良く知る元外交官ならではの視点が心強く感じられる。先に同著者の「イスラム国の正体」を読んでから読むと分かりやすいのでお薦めしたい。
2015年1月23日に日本でレビュー済み
国のリーダーたる者は、今や、真の中東情勢を知らずして、国を導くことはできない。だからと言って、私たち一般市民は知らなくていいということではない。この意味で、『報道されない中東の真実――動乱のシリア・アラブ世界の地殻変動』(国枝征昌樹著、朝日新聞出版)は、大変勉強になる。
読み進めてきて、「イスラム国」のページに差し掛かったところで、イスラム国による日本人2名の殺害予告事件が勃発したことを知り、あまりの偶然に息を呑んだ。
イスラム国については、このように説明されている。「これは武器グループの名前である。・・・この保守過激イスラム主義武装グループは・・・2014年6月29日以降はイスラム国家(Islamic State:IS)と名乗っている。アルカーイダ系から離脱した過激原理主義グループであり、命を捨てる狂信的な覚悟で戦闘に臨む戦闘員たちの勇猛な戦いぶりは相手陣営の戦闘員たちの心胆を寒からしめ大変な恐怖を与えると言われる。一般的に戦争は敵の戦闘能力を削ぎ、無力化することを目的にするが、ISにあっては敵の命そのものを奪うことが目的である。敵とみなす相手を容赦なくいとも簡単に斬首し、あるいは地面に跪かせて拳銃や小銃で撃ち殺す。見せしめのために広場で公開処刑をしばしば行う。日常的に拷問を行う。極めて強い宗派的な言動と行動をとり、アラウィ派市民やキリスト教徒を処刑する例が多い」。
イスラム国の実態については、このように記されている。「ISは資金が非常に豊富である。・・・ISがヌスラ戦線と対決し始めると思想を同じくする、あるいは武器類がより豊富であるなどの理由で同戦線からISに鞍替えする兵士が少なくない。・・・ISは全体で2万2000人余りの戦闘員を抱え、そのうち約5500人が外国人でISの中枢的役割を果たし、しかも彼らの中の250人のチェチェン人戦闘員たちが特に残虐で危険である。これらの外国人兵士に加えて主にシリア北部から参加した2000人の過激イスラム主義信奉者が兵力を担い、さらに欲得勘定で参加した兵士、あるいは恐怖によりやむなく戦列に参加しているシリア人兵士が1万5000人いると評価している。同じころシリア政府では、ISの兵力をおよそ1万5000人余りと評価していた」。
「さらに、同時期に・・・70ヵ国より3300人から1万1000人の外国人武闘要員がシリアの反体制派武装グループに参加し、そのうちの18%が欧米諸国、70%がアラブ中東諸国から来ている、欧米諸国の中では英国とフランスが特に多いと評価された。それらの外国人要員の大部分はISとヌスラ戦線に参加しているとされる。なお、シリア政府ではゾウビ情報大臣が外国人武装要員が80ヵ国以上から入っていると述べている」。
イスラム国の膨張ぶりについても言及されている。「シリアの東北部にあるラッカ県はシリアで民衆蜂起が始まっても平穏な情勢で推移していたが、2013年3月反体制派武装グループが一挙に攻め入りラッカ市を占拠し、県知事やバアス党代表を捕らえて県の行政機構を停止し、ラッカ県全体を反体制派側の手中に収めた。当初はISはラッカ市攻略武装グループには参加していなかったが徐々に市内に入り始め、当初から居た反体制派武装グループを次第に駆逐して、やがてラッカ県はISが支配するところになった」。
そして、ISはイスラム法による統治を行っているというのだ。「ISは支配地域で独自のIS流解釈によるシャリーア(イスラム法)を非常に厳しく施行する。加えて独自のシャリーア裁判所を設置し、市民に対して『無罪の推定』ではなく『疑わしきは厳しく罰する』姿勢で臨む。喫煙、飲酒の罪はむち打ち刑に加えて禁固刑、婚姻関係外での性的関係は死刑、神への冒涜も同じ、しかも10代前半の子どもたちまでも容赦なく大人と同じように裁き、罰し、拷問にかける。広場で公開の処刑がしばしば行われる。姦通罪とされた女性を石打刑で処刑した、教育機関を運営し、独自のモスクを開設して運営する。・・・このように、ISの思想は正統4代カリフの時代(預言者ムハンマドの跡を継いだ4代のカリフの時代がイスラム世界の最も純粋な時代だったとされる)を理想として、その時代を現代に再現する戦いを自分たちで追い求めようとする教条主義的な運動であって、その青臭さが比較的若い世代で社会の理不尽さに不満を持つムスリムたちに強く訴えるところがあるのだろう」。なお、IS(指導者はカリフを自称するアブ・バクル・バグダディ)に反感を抱く複数の反体制派武装グループがISの武力掃討に乗り出しているという。
著者が4年に亘り在シリア特命全権大使を務めたこともあり、本書はシリア政府寄りの論調で貫かれているが、公平を期すには、著者が主張するとおり、巧みに広報戦略を駆使する反体制派から発信される情報だけでなく、シリア政府側の言い分にも耳を傾ける必要があるだろう。
「今日、世界のイスラム教にはスンニー派のイスラム教とシーア派のイスラム教があり、正確な統計はないが、イスラム教徒の中でスンニー派が87〜89%、シーア派が11〜12%を占めているだろうとみられている。それぞれのグループにはさらにいくつもの流派、分派がある」。この後、各派の解説が続いている。
アラブ世界を巡る関係諸国の戦略についても、本書で全体像を掴むことができた。シリア政府を支援する国として、ロシア、イラン、イラク、レバノン(ヒズボッラ)、一方、反体制派の支援国として、米国、英国、フランス、カタール、サウジアラビア、トルコ、イスラエル、そして国連が列挙されている。
「シリアの国外避難民は4家族の内1家族の割合で生活費を稼ぐ男手がなく、女性1人で家族を養っているのが現状だと国連難民高等弁務官事務所関係者が叫ぶ。異郷の地で仕事とてない彼女たちは家族を養うために、自らの命を絶つに等しい決断をして恥辱を耐え忍ぶ。生きるため、生き残るために涙を枯らして彼女たちはSurvival Sexに向かう。誰が彼女たちを咎められよう。ヨルダンに避難した家族の主婦が得たのは1人を相手にして7ドル。トルコではトルコ人男性たちから襲われ、娘たちは家族の窮状を救うためだけに言葉もわからない相手と結婚する。・・・シリア情勢を含めて、アラブ世界の情勢は軍事政治面だけではなく社会の在り方も含めて、これからも神経を研ぎ澄まして注視していかなければならない」。著者の言葉が身に沁みる。
読み進めてきて、「イスラム国」のページに差し掛かったところで、イスラム国による日本人2名の殺害予告事件が勃発したことを知り、あまりの偶然に息を呑んだ。
イスラム国については、このように説明されている。「これは武器グループの名前である。・・・この保守過激イスラム主義武装グループは・・・2014年6月29日以降はイスラム国家(Islamic State:IS)と名乗っている。アルカーイダ系から離脱した過激原理主義グループであり、命を捨てる狂信的な覚悟で戦闘に臨む戦闘員たちの勇猛な戦いぶりは相手陣営の戦闘員たちの心胆を寒からしめ大変な恐怖を与えると言われる。一般的に戦争は敵の戦闘能力を削ぎ、無力化することを目的にするが、ISにあっては敵の命そのものを奪うことが目的である。敵とみなす相手を容赦なくいとも簡単に斬首し、あるいは地面に跪かせて拳銃や小銃で撃ち殺す。見せしめのために広場で公開処刑をしばしば行う。日常的に拷問を行う。極めて強い宗派的な言動と行動をとり、アラウィ派市民やキリスト教徒を処刑する例が多い」。
イスラム国の実態については、このように記されている。「ISは資金が非常に豊富である。・・・ISがヌスラ戦線と対決し始めると思想を同じくする、あるいは武器類がより豊富であるなどの理由で同戦線からISに鞍替えする兵士が少なくない。・・・ISは全体で2万2000人余りの戦闘員を抱え、そのうち約5500人が外国人でISの中枢的役割を果たし、しかも彼らの中の250人のチェチェン人戦闘員たちが特に残虐で危険である。これらの外国人兵士に加えて主にシリア北部から参加した2000人の過激イスラム主義信奉者が兵力を担い、さらに欲得勘定で参加した兵士、あるいは恐怖によりやむなく戦列に参加しているシリア人兵士が1万5000人いると評価している。同じころシリア政府では、ISの兵力をおよそ1万5000人余りと評価していた」。
「さらに、同時期に・・・70ヵ国より3300人から1万1000人の外国人武闘要員がシリアの反体制派武装グループに参加し、そのうちの18%が欧米諸国、70%がアラブ中東諸国から来ている、欧米諸国の中では英国とフランスが特に多いと評価された。それらの外国人要員の大部分はISとヌスラ戦線に参加しているとされる。なお、シリア政府ではゾウビ情報大臣が外国人武装要員が80ヵ国以上から入っていると述べている」。
イスラム国の膨張ぶりについても言及されている。「シリアの東北部にあるラッカ県はシリアで民衆蜂起が始まっても平穏な情勢で推移していたが、2013年3月反体制派武装グループが一挙に攻め入りラッカ市を占拠し、県知事やバアス党代表を捕らえて県の行政機構を停止し、ラッカ県全体を反体制派側の手中に収めた。当初はISはラッカ市攻略武装グループには参加していなかったが徐々に市内に入り始め、当初から居た反体制派武装グループを次第に駆逐して、やがてラッカ県はISが支配するところになった」。
そして、ISはイスラム法による統治を行っているというのだ。「ISは支配地域で独自のIS流解釈によるシャリーア(イスラム法)を非常に厳しく施行する。加えて独自のシャリーア裁判所を設置し、市民に対して『無罪の推定』ではなく『疑わしきは厳しく罰する』姿勢で臨む。喫煙、飲酒の罪はむち打ち刑に加えて禁固刑、婚姻関係外での性的関係は死刑、神への冒涜も同じ、しかも10代前半の子どもたちまでも容赦なく大人と同じように裁き、罰し、拷問にかける。広場で公開の処刑がしばしば行われる。姦通罪とされた女性を石打刑で処刑した、教育機関を運営し、独自のモスクを開設して運営する。・・・このように、ISの思想は正統4代カリフの時代(預言者ムハンマドの跡を継いだ4代のカリフの時代がイスラム世界の最も純粋な時代だったとされる)を理想として、その時代を現代に再現する戦いを自分たちで追い求めようとする教条主義的な運動であって、その青臭さが比較的若い世代で社会の理不尽さに不満を持つムスリムたちに強く訴えるところがあるのだろう」。なお、IS(指導者はカリフを自称するアブ・バクル・バグダディ)に反感を抱く複数の反体制派武装グループがISの武力掃討に乗り出しているという。
著者が4年に亘り在シリア特命全権大使を務めたこともあり、本書はシリア政府寄りの論調で貫かれているが、公平を期すには、著者が主張するとおり、巧みに広報戦略を駆使する反体制派から発信される情報だけでなく、シリア政府側の言い分にも耳を傾ける必要があるだろう。
「今日、世界のイスラム教にはスンニー派のイスラム教とシーア派のイスラム教があり、正確な統計はないが、イスラム教徒の中でスンニー派が87〜89%、シーア派が11〜12%を占めているだろうとみられている。それぞれのグループにはさらにいくつもの流派、分派がある」。この後、各派の解説が続いている。
アラブ世界を巡る関係諸国の戦略についても、本書で全体像を掴むことができた。シリア政府を支援する国として、ロシア、イラン、イラク、レバノン(ヒズボッラ)、一方、反体制派の支援国として、米国、英国、フランス、カタール、サウジアラビア、トルコ、イスラエル、そして国連が列挙されている。
「シリアの国外避難民は4家族の内1家族の割合で生活費を稼ぐ男手がなく、女性1人で家族を養っているのが現状だと国連難民高等弁務官事務所関係者が叫ぶ。異郷の地で仕事とてない彼女たちは家族を養うために、自らの命を絶つに等しい決断をして恥辱を耐え忍ぶ。生きるため、生き残るために涙を枯らして彼女たちはSurvival Sexに向かう。誰が彼女たちを咎められよう。ヨルダンに避難した家族の主婦が得たのは1人を相手にして7ドル。トルコではトルコ人男性たちから襲われ、娘たちは家族の窮状を救うためだけに言葉もわからない相手と結婚する。・・・シリア情勢を含めて、アラブ世界の情勢は軍事政治面だけではなく社会の在り方も含めて、これからも神経を研ぎ澄まして注視していかなければならない」。著者の言葉が身に沁みる。
2015年3月8日に日本でレビュー済み
日本の元外交官が、現在のシリア情勢について綴った書。
著者はシリア動乱について、各種メディアによるこれまでの報道では、
シリア政府側の考え、意見、姿勢に関する情報が不足していること、
そして状況の全体像が見えにくくなっていると指摘している。
そのため本書は、ニュース等で報道されていない事実を紹介しながら、
シリア動乱の実態と中東アラブ世界全体の情勢を、詳細に分析している。
紛争国の現場の実態、宗教宗派抗争における国家間の関係、
重要人物の性格など、駐シリア特命全権大使を務めたこともある
著者ならではの情報が網羅されていて、とても勉強になった。
特に第4章では、中東に介入する関係諸国の実態が国別に
説明されているのが良かった。
「中東情勢は複雑」と言われる所以が、
本書を読んで多少でも理解することができた。
お勧めの一冊。
著者はシリア動乱について、各種メディアによるこれまでの報道では、
シリア政府側の考え、意見、姿勢に関する情報が不足していること、
そして状況の全体像が見えにくくなっていると指摘している。
そのため本書は、ニュース等で報道されていない事実を紹介しながら、
シリア動乱の実態と中東アラブ世界全体の情勢を、詳細に分析している。
紛争国の現場の実態、宗教宗派抗争における国家間の関係、
重要人物の性格など、駐シリア特命全権大使を務めたこともある
著者ならではの情報が網羅されていて、とても勉強になった。
特に第4章では、中東に介入する関係諸国の実態が国別に
説明されているのが良かった。
「中東情勢は複雑」と言われる所以が、
本書を読んで多少でも理解することができた。
お勧めの一冊。