1978年にドイツで出版された古い本だが古さは無い。筆者はドイツの物理学者で地震は専門外だが、科学者の手法で地震の予兆を追求し、推論を加えている。正統的地震学者が動物の地震予知を信じないことを惜しみ、歴史時代から現代に至る古今東西の文献と一部の聞取りから、確かに動物の異常行動が地震前にあることを説得力を以て展開する。次いで筆者はこれら予兆は、地震前に大気中に帯電エアゾル（イオン）が広がることが原因ではないかという推論を提示する。充分説得力のある主張だ。
訳者はドイツ滞在経験のある化学者で、単に右から左に翻訳したのではなく、中国と日本の古典は漢文と古文で引用し、日本の読者向けに筆者と相談の上原文の一部取捨選択も行っている。翻訳臭のない優れた翻訳だ。 今日本では大気中のイオン濃度で地震を予知しようという観測グループがある。また通常受信できない遠隔地のFM放送局が地震前に受信できるという現象に注目した観測が続いているが、これはイオン濃度に直結する現象と思われる。最終的に信じるか否かは個々人の考え方だが、少なくとも一度は耳を傾ける価値がある。
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