内容説明
世紀を超え、国家を超え、いまなお観客の魂を魅了する映像作家、タルコフスキイ。映画に対する情熱から、作劇、演出の実際にいたるまで、現在に遺されたソ連時代の肉声を集成し、“映像詩人”の原点に迫る、貴重な映画論集。
目次
第1章 芸術としての映画
第2章 映画イメージ
第3章 シナリオ
第4章 構想とその実現
第5章 モンタージュ
著者等紹介
タルコフスキイ,アンドレイ[タルコフスキイ,アンドレイ][Тарковский,Андрей]
1932年、旧ソ連のイワノヴォ州に生まれる。第二次世界大戦後を代表する映画作家のひとり。あいつぐ検閲をめぐる当局との軋轢で寡作を余儀なくされたが、国際的に高い評価を受けた。1984年、ミラノで事実上の亡命を宣言し、1986年、パリで客死する。日本でも「日本タルコフスキイ協会」が設立されるなど、多くのファンに支持された
扇千恵[オウギチエ]
神戸市に生まれる。神戸市外国語大学ロシア学科卒業、同大学院修士課程修了。現在は大学非常勤講師。専攻はロシア映画史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
月世界旅行したい
14
家宝にします。2015/05/13
FK
4
翻訳のせいか、タルコフスキイの言葉や内容が難解なのか、なかなかスッと頭に入ってこないというのが、正直な感想。 /映画における作家の仕事の本質とは何か? 条件付きではあるが、それを時間の彫刻、と定義することが可能だろう。(P.16)/われわれは無数の偏見にとらわれている。(中略)それらの偏見のうちのひとつは、芸術作品とは理解できるもの、それもすぐにその場で理解できるものであるべきだ、という考えである。(P.46)【「分かりやすい授業」と同じか。そもそも分かりやすいということが絶対的にいいことなのかどうか】 2019/10/01
MO
2
彼の映画を見るたび、何考えてるんだろう?どうやって撮っているんだろう?と思って観ているのだけど、この本はその一片を垣間見れて貴重。予想通りに小難しい事をいっているのだが、彼の映画と同じで決して難解ではない。むしろ、読み進めていくと彼が大切にしている事や視点が浮かび上がってくる。そして、映画の体験のように何度も読んでその一節一節にウットリとしたい。2021/02/28
ハンギ
1
映画に関するタルコフスキーの名言がいろいろあるけど、訳書がちょっと読みづらかった。ソヴェトでの映画クラスの講義の教科書のようらしい。無料で配布されたそうで羨ましい。憎々しげにアメリカにはプロデューサーが映画を作り、ソ連では国が映画を作るから、しぶしぶシナリオや脚本家は必要だと述べる所とか面白かった。映画の代名詞とも言えるモンタージュ技法についても懐疑的で面白かった。観客の情感を引き出し、集中を維持するために映画の連続性があるとタルコフスキーは考えているのだろうか。
こんな本を読んだよ
1
ソ連映画委員会附属脚本家・監督養成高等クラスの講義録。映画によって、時間はどのような形式で刻み込まれるのか?この形式を「事実の形式」と規定し、事実の形式と現象の中に刻み込まれた時間の中に映画芸術の理念があると彼は言う。映画の詩性は人生に対する直接的な観察から生まれ、それは俳句(日本の三行詩と彼は呼ぶ)の感性に極めて近い。例えば、「波間の釣竿が・わずかに岸辺に触れた・満月」「露が降り・茨のすべての棘に・雫が光る」など。モンタージュ信奉に対する彼の批判は必読。2012/01/09