内容説明
多岐にわたり展開する系統地理学の研究を幅広く紹介。2010年12月に開催された第42回種生物学会シンポジウム「系統地理は何をする」の講演内容を中心に構成されている。
目次
系統地理学の歴史とこれからの展望
第1部 分布変遷の歴史(ニホンザリガニのDNAに刻まれた北日本の地史―歴史遺産としての遺伝的多様性;温帯性草本バイケイソウの分布変遷を分子マーカーで探る;海を渡る植物の航海記―汎熱帯海流散布植物の分子系統地理;日華植物区系におけるハリギリの生物地理;琉球列島の渓流環境に適応した固有植物の起源を探る)
第2部 分布変遷から進化研究へ(系統地理から適応進化に迫る―植物の光受容体フィトクロムにおける自然選択の痕跡;日本列島でみられる哺乳類の毛色多型と系統地理学から見えるその遺伝的背景)
第3部 解析手法(ゲノム時代の集団解析―ヒト研究を例に;系統地理学における統計的推定の手法と今後の展望)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くろじら
1
こういう「最新の研究成果を紹介」みたいな本は発行されてすぐに読むべきだったかな,と思う.mtDNAの系統地理の事例がどわーっと現れてAviseのPhylogeography(邦訳:生物系統地理学)という系統地理学の全体像を見渡す本が出た後,2010年代後半になってNGSによる大量のSNPを比較したゲノムデータによる研究が増えてくるまでの間に挟まれた時期の本なので,教科書的に読んで学ぼうとすると多少微妙な感じではある.最後の集団遺伝解析の方法解説は,近年のゲノムデータの入門的な感じで有用だと思う.2019/10/02