内容説明
なぜ人間にだけ道徳が生まれたのか?気鋭の進化人類学者が進化論、動物行動学、文化人類学、考古学、霊長類のフィールドワーク、狩猟採集民族の民族誌などの知見を駆使して人類最大の謎に迫り、エレガントで斬新な新理論を提唱する。
目次
ダーウィンの内なる声
高潔に生きる
利他行動とただ乗りについて
われわれの直前の祖先を知る
太古の祖先をいくつか再現する
自然界のエデンの園
社会選択のポジティブな面
世代を越えた道徳を身につける
道徳的多数派の働き
更新世の「良い時期」と「悪い時期」と「危機」
「評判による選択」説を検証する
道徳の進化
著者等紹介
ボーム,クリストファー[ボーム,クリストファー] [Boehm,Christopher]
南カリフォルニア大学人類学・生物科学教授、ジェーン・グドール研究センター長。ロサンゼルスとサンタフェに在住
斉藤隆央[サイトウタカオ]
翻訳者。1967年生まれ。東京大学工学部工業化学科卒業。化学メーカー勤務を経て、現在は翻訳業に専念
長谷川眞理子[ハセガワマリコ]
総合研究大学院大学先導科学研究科教授。1952年生まれ。東京大学理学部卒業、同大学院理学系研究科博士課程修了、理学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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zoe
22
食料、肉を分配することはとても重要。皆で協力して狩りをする、単独でも大物をしとめる、労働集約型の狩りの成果を如何に分配するかが鍵となる。モラルの起源は25万年前くらいにさかのぼるのではないか。血縁以外にも分配する。独占しようする者は排除される。利他的のふるまいが望まれる。フリーライダーも。羞恥心がうまれ、それは顔が赤くなる生体反応ともリンクしているかもしれない。一度、道徳が生まれると、美徳と悪徳の考えが成立し、パートナーの獲得にも影響し、遺伝的選択圧にもなったかもしれない。2021/10/09
テツ
20
何故ホモサピエンスは種を通してモラルという概念を磨き上げ育て上げてきたのか。利他的な行動はしばしばそれを行う個体を危機に晒すけれどそれは何のためか。全て群れのため。社会という枠組みを滞りなく運営していくため。個の自由と集団からの抑圧との間で人は(特に若者は)悩み苦しむものだけれど道徳も良心もモラルも全ては社会を円滑に運営するため、つまり自分自身もそれを守ったが利益を享受しやすいためというシンプルなことが解ればそうした苦しみも少しは楽になるのかもしれない。何故こんなきまりがあるの?君が生きやすいようにだよ。2020/04/30
りさ
4
「良心をもつというのは、コミュニティの価値観に個人的に共鳴することであり、つまり、自分の集団のルールを内面化することだ」という。ルールを内面化というのは、個人の思考するプロセスを抑制するならば、洗脳に変わり、他者の意図の通りに動く中身のないコモディティ人材になりがち。ゆえに良心の内在を認めるかどうかは、個人の熟考が含まれた上で、義務感からではなく、喜んで自発的に取り組めるかどうかになるのでは??案外、チンパンジーと人間を比較する時点で、人間の独自性を考察するには浅いのでは?私にとっては、説得力に欠けるか?2020/10/25
ららら
3
道徳観の起源について進化心理学の観点から解説している。ゴリラ、ボノボ、チンパンジー、ヒトの4種と現代に残る狩猟採集民族の比較を通して、共通する性質、異なる性質を比べてモラルはどのように獲得されたのかを考える。どの民族にも恥の観念はあるが罰の観念はなく、恥はヒトだけが持つ心の動きをだ、という話が興味深かった。2021/03/02
GASHOW
3
人は社会をつくることによって生存してきた。集団の維持にはモラルが必要なんだなと。2015/11/19