内容説明
古来水資源の安定化に苦慮してきた中国。本書では、現地の資料を通して、中国の水環境を考察するのに欠かせない黄河と長江の環境史を全時代を通して辿り、あわせて自然改造の巨大プロジェクトが進行する現代の水環境政策を分析する。食糧・開発・環境問題など世界の動向を左右しかねない中国環境政策の実態に迫る。
目次
第1章 中国環境史研究の現状と展望
第2章 黄河環境史研究の可能性
第3章 長江水環境の歴史
第4章 曲格平の環境思想
第5章 新疆ウイグル自治区南部の水環境
第6章 青蔵高原の水資源と環境
第7章 大河上流域における生態移民
第8章 海河流域の水資源と南水北調
第9章 中国東北地方の水資源と環境
第10章 中国北部の地下水と環境
著者等紹介
小林善文[コバヤシヨシフミ]
1948年兵庫県生まれ。1971年京都大学文学部卒業。1983年京都大学大学院文学研究科博士後期課程東洋史学専攻学修。博士(文学)(京都大学)。現在、神戸女子大学名誉教授。2007、2008年京都大学人文科学研究所特任教授。専門は中国水環境論、中国近現代教育史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鵐窟庵
6
中国の水環境について複数の地域:黄河流域、長江流域、海河部、高原部、地下水など10章に渡り、各地域の水環境の現状と課題を論じている。長江流域の水を黄河流域に送水する「南水北調」(長さ1400km本州と同等、年間送水量は利根川の1.5倍)の各線(西線、中線、東線)の利水効果はありつつも、環境問題を論じる。各地域で水環境が異なるため、水害や欠水など各地で異なる様子で発生するため、流域全域での全体水利用計画が必要だと説く。上中下流が非常に長い大河川ならではの環境問題や水問題が起こることについて考えさせられる。2020/08/23