出版社内容情報
クマは眠る。
北域の白雪は紺碧の森を隠し、冷艶な樹海の深みにクマは眠る。
しかし今、クマが安らかに眠れない時代が到来した。
学生時代、故郷青森の果樹園でハンターによる無残なクマの射殺場面に遭遇し、著者・米田一彦はその人生をクマの調査・研究に捧げる決意を固めた。
以来四十年、時には越冬中の母子グマの姿を追い求めて厳冬の山を彷徨し、あるいは捕獲されたクマの射殺現場に立ち会いながら、このいたいけな野生動物と人間とが共生できる方策を模索し続けてきた。行政の無為無策による大規模駆除に対して痛烈な批判を展開する一方、絶滅の危機に瀕しているクマの世界に忍び寄る、新たな要因がもたらす異常行動の謎を解き明かしていく。
内容説明
ハンターらに囲まれた母子グマ。母グマは泣き叫ぶ小グマを守るように、そして最後の愛情を与えるかのように体をなめはじめた。そのとき銃弾が彼女の眉間を貫いた…。里山への出没が増えたツキノワグマ。駆除という殺処分をマニュアル化して推し進める行政。2006年の駆除数は、明らかにされただけでも4000頭以上にのぼる。「クマはゴミじゃない」。ツキノワグマ研究の第一人者が、クマの異常行動の謎を解き明かし、人間と野生動物の共生の道を訴える渾身の書き下ろし。
目次
第1章 クマよ、深く眠れ(不思議さに満ちたその越冬生理;忘れられぬ秋田のクマたち ほか)
第2章 暖風に抱かれて(荘厳なクマの死が、私を「戦う人生」に向かわせた;西中国のクマたちは「集落依存型」だった ほか)
第3章 地方分権でクマはゴミ扱いになった(クマを追い詰める鳥獣保護法改正の動き;二〇〇二年、絶滅への序章 ほか)
第4章 忍び寄る気象要因の影(なぜクマは人を襲うのか?;過去に例のない行動をとるクマたち ほか)
第5章 クマは三日後に眠る?(出没へ影響を与える気象現象とは?;高温、大雨はクマの出没に影響するか? ほか)
著者等紹介
米田一彦[マイタカズヒコ]
1948年青森県生まれ。秋田県庁で鳥獣保護行政を担当し、86年退職。90年西中国地方のクマ保全を目指し、広島県吉和村(現廿日市市)に転居する。91年日本で初めて奥山放獣を手がけ、97年以降は韓国と中国でも保全事業に取り組む。現在、特定非営利活動法人・日本ツキノワグマ研究所理事長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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