内容説明
自ら命を絶つ唯一の動物、ヒト。それは「他者の気持ちを推し量る」心の進化のせいなのか。鬱で自殺の危機を経験した心理学者が、死に傾く心の内を科学的に分析する。
目次
1章 無の誘惑
2章 火に囲まれたサソリ
3章 命を賭ける
4章 自殺する心に入り込む
5章 ヴィクがロレインに書いたこと
6章 生きる苦しみを終わらせる
7章 死なないもの
8章 灰色の問題
著者等紹介
ベリング,ジェシー[ベリング,ジェシー] [Bering,Jesse]
1975年アメリカ生まれ。現在、ニュージーランドのオタゴ大学サイエンス・コミュニケーション・センターで所長を務める
鈴木光太郎[スズキコウタロウ]
東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。元新潟大学教授。専門は実験心理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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どんぐり
96
人間ではなく、種としての「ヒト」が書名である。自殺をヒトの進化的な適応行動としてとらえた心理学からみた総説、そして自殺を自己からの逃避としてとらえた6段階からなる認知的ステップの考え方が面白い。自殺の認知的ステップの第1段階は、富裕から貧困への転落などの「期待値に届かないこと」、第2段階は暴露・侮辱・拒否されているという感覚の「自己への帰属」、第3段階は不快で鋭利な自意識から逃れたいという「自意識の高まり」、第4段階は現在の圧倒的な否定的感情から逃げたいという欲求から生じる「否定的感情」、→2022/01/10
テツ
29
死という概念を発明してしまい、そこに至る時間に人生などという大仰な名前を付けてしまい、そこで何かを成さねばならないという洗脳を受けてしまったからこそ、人は自殺する。心理学的に、社会学的に説かれる自殺のメカニズム。突き詰めて考えれば個の生にも死にも価値があるとは思えないし、自殺という行為を戒めるためのロジックも導き出せないのだけれど、それでも(少なくとも周囲の友人知人には)死んで欲しくない。それを言語化したら「俺が嫌だから死ぬな!」としかならないんだろう。心は難しい。2021/05/30
くさてる
26
自らもまた自殺を考えた経験のある社会心理学者である著者がさまざまな側面から「自殺」というテーマについて考察した一冊。赤裸々な自身の体験から動物は自殺するのか?という話、自殺した少女の手記、自殺を扱ったドラマが人々に与える影響、自殺が周囲に与える影響など、そして「人はなぜ自殺するのか」という最終的な所まで、読み応えあって興味深かった。人間が社会的な動物であるということの大切さを感じた。2021/09/18
秤
22
シルヴィア・プラスなど文学関連の話題も多くて興味深かった。『早すぎる夜の訪れ』などの関連書籍も読みたい。「ぼくに自殺の想念が再び訪れる時には(可能性はあると思う)、最新の科学的理解で武装していたいと思う。それによって、ぼく自身の破滅的思考を批判的に分析することが、あるいは少なくとも自分の死というものをよく理解することが可能になる。ぼくとしては、あなたにもこの強みをもってもらいたいと思う。ぼくが本書を書いた理由もひとつはそこにある」2021/06/12
かめぴ
18
科学者からの視点で考察されている、感じがして興味深く読了。心理学とも哲学とも少し違うのかなぁ、観点が新しいのか⁈ おぉとなるところが多々。自身もかつては、みたいなこともあって色々な側面から。死後の世界感はデフォルト⁈自殺は病気⁈なるほどと目から鱗状態です。2021/10/10