内容説明
著者が祖母や村のフチから聞き集めたアイヌと神々の38の物語が読みやすく情感豊かな文章で綴られる。すべての話にわかりやすい解説が添えられ、アイヌの文化や習俗、世界観をたっぷり味わえる一冊。アイヌ文学名著の文庫化。
著者等紹介
萱野茂[カヤノシゲル]
1926年北海道捨流郡平取町二風谷に生まれる。小学校卒業と同時に造林・測量・炭焼き・木彫りなどの出稼ぎをして家計を助ける。1953年アイヌ研究者某に家のトゥキパスイ(捧酒箸)を持ち去られたことが動機となって、アイヌ民具の収集・保存・復元・研究に取組み、1972年、収集した約2,000点の民具で「二風谷アイヌ文化資料館」を結実させる。アイヌ語研究の第一人者で、アイヌ語を母語とし、祖母の語る昔話・カムイユカラを子守歌替りに聞いて成長。1960年からアイヌ語の伝承保存のため、町内在住の古老を中心にアイヌの昔話・カムイユカラ・子守歌等の録音収集を始める。1961年、金田一京助のユカラ研究の助手を務めた。1975年、『ウェペケレ集大成』で菊池寛賞、1978年、北海道文化奨励賞受賞。1983年、二風谷アイヌ語塾を開設、塾長として地域の小・中学生を指導。1989年、第23回吉川英治文化賞受賞。2006年、没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちえ
52
アイヌ民族初の国会議員、アイヌ語研究者の萱野茂さんが、上の世代の人達が語ったテープ録音を日本語に起こしたウエペケレ(昔話)絶版だったのが文庫で再販。アイヌの生活ぶりや神々や自然との関係が直に伝わってくる。神様を叱りつけたり脅して取引きをしたり、神様も言い訳したりでとても面白い!猥談もあるけどおおらかで明るいなぁ。私は萱野さんの生まれ育った二風谷の隣町に10年以上前に住んでいたので地名も馴染みがありとても懐かしい。それぞれのお話に続く萱野さんの解説がまたいい!割愛された半分のウエペケレも是非本にしてほしい。2020/03/25
saga
49
アイヌの昔話・ウエペケレは興味深い。神と人が近しく、食料としての熊やシカは、狩猟の結果死ぬことによって神になる。他の動植物にも神性が宿っている。そして、人の不利益になることがあると、人が神を叱るという考え方が面白い。物語の構成は多分に教育的でパターン化されている印象。それは厳しい北の大地で自然と共生する知恵なのだろう。破裂音、促音が多いアイヌ語を日本語表記に翻訳しているので、小さいラやレ、良く出てくる地名のユペッなどを、どのようにアイヌの方が発音するのかが知りたくなった。2023/10/04
ふう
26
同じパターンで語られる話が多いが、どれも神々、人々が生き生きと描かれて楽しい。家に入る時の決まり文句とか、お話の最初、何不自由なく暮らしていることの表現とか、リズムがあって、アイヌ語の響きで聴いてみたい。ラストのほとんどは主人公たちがこの世を去っていく場面で、これも新鮮に感じた。神々と人が対等で、恋したり嫉妬したり楽しいが、神々の中に身分があるのが不思議。驚いた時は口や鼻から魂が抜け出ないように手で押さえるのがなんともユーモラス。2022/12/08
サケ太
19
アイヌの昔話集。作中で出てくる物や風習については解説があるのでありがたい。独特な雰囲気を感じ取れるお話。人食い人間が人間の子供を育てた話は印象に残る。残酷な所業もカムイによるもの、という事にしているが、それが登場人物の救いにもなっているのがいいな、と感じた。2022/06/01
ソルト
13
漫画『ゴールデンカムイ』が大好きでアイヌの文化に興味がわき手に取りました。アイヌの著者が録音収集した「ウウェペ ケレ」=アイヌの「昔話」を集めた一冊。アイヌには植物や動物、火や水など様々な神々が登場し、人々と近い関係にあります。人々に手をかしたり、悪さをしたり、時には神が人間に恋をし横恋慕しようとしたり…と読みやすくいろんなお話を読めて面白い。一つ一つ解説や、アイヌの民具を絵と一緒に見れて勉強になる。漫画も好きなので「あ!ここに出てきた道具だ」となりそちらも好きな方にもおすすめです。2020/04/17