内容説明
以前のような国全体の成長が望めない中、これまでのような国から獲得した予算で地域基盤を強化・維持する地方の運営方針はもう通用しない。地域にも「経営」の視点が必要となっている。幸い、インターネットによって小口販売が可能となり、少量生産でも事業に挑戦できるし、SNSのクチコミにうまく乗ることができれば地方発のヒット商品の開発も可能となるなど、地方の小規模事業者に追い風が吹いている。さらに近年では、株式発行や借入金以外に「ソーシャルファイナンス」と呼ばれる、新たな代替的資金調達手段も登場してきている。しかし、個別の事業者が独力で全国の競合企業を相手に勝ち抜いていくのは依然容易ではない。本書は、地域経営にとって最も重要度が高い「新事業創出」、「地域事業者の育成」、そしてそれらに必須の「資金調達」を中心に研究・分析結果を整理し、全国の地域経営に携わる政策担当者、実務者に対しての示唆を提供することを目的としている。
目次
第1章 今こそ地域に経営視点を―サステナブルな社会を目指して
第2章 購入型クラウドファンディングと中小企業、地方企業―可能性と課題
第3章 購入型クラウドファンディングと地域金融―地域金融機関の購入型CFの役割に関する認識と実施体制
第4章 地域課題解決におけるソーシャルファイナンスの役割―日本版シビッククラウドファンディングの動向
第5章 デジタルトークン・地域通貨の可能性と課題―飛騨信用組合による「さるぼぼコイン」を事例に
第6章 ふるさと納税の概要とそれが自治体運営に迫っていること―自治体運営におけるパラダイムシフト:経営視点の導入
第7章 地域事業者育成支援効果、ビジネス力向上策―ふるさと納税の返礼品提供事業者の事例
第8章 地域アントレプレナーシップの創出に向けて―ふるさと納税の返礼品提供事業者のデータ分析とアンケート調査から
第9章 地方における移住・定住政策と関係人口増加策―ふるさと納税を契機とする各種政策からの示唆
第10章 ふるさと納税を契機とした地域金融機関の機能強化の可能性―地域金融機関の融資状況と地域での産官金連携への状況
第11章 今後目指すべき地域経営の姿とは
著者等紹介
保田隆明[ホウダタカアキ]
神戸大学大学院経営学研究科教授。同研究科事業創造&地方創生センター長。大手外資系投資銀行を経て起業。同事業売却後、ベンチャーキャピタルファンド、金融庁金融研究センター、小樽商科大学准教授等を経て、2015年9月から現職。なお、2019年8月より、2021年3月まではスタンフォード大学客員研究員として米国シリコンバレーに在住し、SDGs/ESGに向けた社会変革、企業変革について主にソーシャルファイナンスを中心に研究した。一橋大学経済学研究科客員研究員も兼任し、数社の社外取締役や監査役を兼務。博士(商学)早稲田大学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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