出版社内容情報
宮崎アニメには思春期を読み解くヒントがいっぱい。物語は、言葉にならない思いを代弁し、子どもから大人への橋渡しをしてくれる。作品に即して思春期を考える。
内容説明
思春期相談室の現場で、どうしてこんなに宮崎アニメの話が出るのか。そんな疑問から、臨床心理士としてのこの分析は始まった。子どもから大人になるときの、言葉にできないさまざまな想いが、「どうしてそれが好きなのか?」から、スリリングにひもとかれる。
目次
序章 思春期と喪失―『海のトリトン』をてがかりに
第1章 となりのトトロ―世界との一体感に包まれて
第2章 千と千尋の神隠し1―親がブタになったとき
第3章 千と千尋の神隠し2―世界と自分を取り戻す
第4章 もののけ姫と魔女の宅急便―「思春期の呪い」をとく
第5章 ハウルの動く城―私が私でいるために
終章 思春期がもたらすもの
著者等紹介
岩宮恵子[イワミヤケイコ]
臨床心理士。島根大学教育学部教授。聖心女子大学文学部を卒業後、鳥取大学医学部精神科での臨床を経て、臨床心理相談室を開業。2001年より、島根大学で教鞭を執るかたわら教育学部附属こころとそだちの相談室の室長として、またスクールカウンセラーとしても思春期の子どもたちの問題に向かい合っている。2013年より河合隼雄学芸賞選考委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ホークス
42
宮崎アニメに込められた思春期への強いメッセージを臨床心理士が丁寧に解説。例えば「千と千尋」で親が豚になるのは、親も一人の人間だと知るショックを表す。そうだったのか。「トトロ」のメイと五月は思春期の前と最中を表す。だから気になるのか。中でも「ハウル」の謎解きには目からウロコが落ちた。皆気づいてて私が鈍かっただけなのかなあ。著者が「海のトリトン」に衝撃を受けた話が冒頭にあって印象的。思春期は複雑な世界を受け入れる時なのだ。私は漫画「どろろ」だった。人間の成長に向き合う著者の熱さと優しさが素敵な一冊。2019/06/01
あんこ
34
わたしは未だにつらくなるとジブリアニメをひたすら観てしまうのですが、観る度に印象が変化するのは小さい頃のわたしといまのわたしが違うから自己投影の仕方も変化しているのかなと思います。プリマー新書から出ているこちらはカウンセリングの観点からジブリアニメと思春期の子ども達の心境を解説しています。児童向けですが、大人が読んでも十分おもしろい本です。むしろ、思春期の子ども達への接し方に悩んでいる方にも勧めたいです。昔の自分を振り返るきっかけになったりするのではないでしょうか。学校の保健室などに置いてほしい本でした。2014/05/31
タルシル📖ヨムノスキー
27
臨床心理士の著者が、スクールカウンセラーとして10代の若者と関わっていく中で、よく話題に上る宮崎アニメ。なぜ宮崎アニメは思春期の若者の心をつかむのかを分析した本。この本で取り上げているのは、〝となりのトトロ〟、〝千と千尋の神隠し〟、〝ハウルの動く城〟、〝魔女の宅急便〟。〝ラピュタ〟と〝耳をすませば〟が出てこなかったのはちと残念だが、正直、「ここまで深読みするか」って感じ。コレに比べたら私なんか、本の上っ面しか撫でてないじゃないかと、ちょっと落ち込んだ。とにかく〝センチヒ〟の分析はすごいです。ぜひご一読を。2019/07/29
純子
27
思春期相談室では宮崎アニメのことが度々話題にのぼるのだそうです。河合隼雄さんの著作の影響を受け、筆者も物語を読み込み、奥に秘められたものを探るようになったのだとか。思春期の子どもたちの心のうちにあるものと宮崎アニメの物語にあるものをリンクさせながら書かれた文章には興味深いものがたくさんありました。思春期は第2の誕生だと聞いたことがある気がしますが、それまでの幼い自分との決別という意味で『喪失』『死』のイメージにつながるものがあるのだと書かれていたのには新鮮な感じを受けました。2017/03/27
あんこ
16
再読。思春期の観点から考察するジブリ。再読してみても、こういう視点からでも観ることができたのか、と新鮮な気持ちになりました。魔女の宅急便やカオナシの件はわたしも同じ捉え方をしていたのですが、トトロに関しては大学のとき、倫理学の講義で全く異なる観点から考察していたので、「これ!」という正解がないのもジブリの魅力だなと思いました。2017/07/05