内容説明
世界における動物福祉論の最大の画期となり、現在まで重要性を増し続ける革命的書物にしてシンガーの代表作。そのあまりに苛烈かつ論理的な倫理の要求は、われわれ全存在に向けられている。大幅な改稿を施された2009年版にもとづく決定版。
目次
第1章 すべての動物は平等である
第2章 研究の道具
第3章 工場畜産を打倒せよ
第4章 ベジタリアンになる
第5章 人間による支配
第6章 現代のスピシーシズム
著者等紹介
シンガー,ピーター[シンガー,ピーター][Singer,Peter]
1946年メルボルン生まれ。メルボルン大学卒、1971年にオックスフォード大学で博士号。専門は哲学・倫理学。豪モナシュ大学教授を経て、米プリンストン大学教授。国際生命倫理学会の初代会長
戸田清[トダキヨシ]
1956年大阪生まれ。大阪府立大学、東京大学、一橋大学で学ぶ。博士(社会学)、獣医師(資格)。日本消費者連盟事務局、都留文科大学ほか非常勤講師、長崎大学助教授を経て、長崎大学環境科学部教授。専門は環境社会学・平和学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kanaoka 56
12
人間固有の尊厳とは、キリスト教下の人間観であり、二千年に及ぶイデオロギーである。 その理論的根拠には、創造神の定め、魂の存在、理性・意識を持つ事等、時代とともに変遷を辿るが、所詮は人間による自己正当化でしかない。人間の価値を高めることは、他の動物の価値を引き下げる事に繋がる。 理性や意識に根拠を求めるならば、幼児、知的障害者より、知的な動物の方が価値が高い事になる。動物解放運動は、苦しみを感じる能力に焦点をあて、普遍的で理性的な倫理基準を提案する。2017/12/11
大道寺
6
反「種差別(スピシーシズム)」の書。種差別とは何か? 人種差別なら白人とか黒人という人種を理由にした差別であり、性差別なら男性とか女性という性を理由にした差別であり、そして種差別なら人間とか豚とか牛といった種を理由とした差別である。帯には「動物の権利運動のバイブル」と書かれており、実際そうなのだろうが、著者は権利論ではなく、功利主義の立場から動物解放を擁護する。/(1/5)2013/05/06
山像
4
シンガーについては「動物からの倫理学入門」を読んで、「倫理体系の首尾一貫性は非常に高いが簡単には容認し難い結論を導き出す人」という前知識を持っていた。果たして読んでみるとその通りだった。肉食に関してはほぼ同意できる話だったが、正当化できる動物実験が総数の0.1%以下だとする実質上全廃の主張は無理があると思う。(そこは主張の核ではないが)薬理作用や毒性が種間で大きく異なる物質が存在するという個別例の集積と、動物実験全体の信頼性とは話が別でしょうに。 重度障害児の安楽死の問題などもあり、一つの極論という理解。2015/04/18
panda2021
3
ピーター・シンガーがすごくいいと思うところは、マイケル・サンデルと同様、一般的な反論に対する再反論が用意されているところである。例えばベジタリアンに対しても、なぜ肉を食べるのは駄目で、植物はいいのか、命を奪うのは同じでは?や目の前のステーキを食べなくても、死んだ牛が生き返るわけじゃない、肉を食べないと栄養が偏って、病気になるなどの反対意見があると思うが、そういったものにも丁寧に反論しているところは非常に好感もてる書き方である2018/09/23
ponkts
3
人種差別のアナロジーで「種差別主義(スピシーシズム)」って概念が提出されるんだけど、それくらいラディカルな本で衝撃的だった。放射能被爆で嘔吐を繰り返し最後には死にいたるサルの動物実験や、製品テストのために目に有害な物質を滴下されるウサギの写真、劣悪な環境で育成される畜産動物の例が詳細に紹介されているので、これを読んでいて気持ちが悪くならない人はいないと思う。俺はベジタリアンになるつもりは無いが、ベジタリアンの人たちの気持ちはこれを読めば嫌でも分かる。おそらく 100 年後も訴求力を持ち続けるであろう本。2017/02/03