出版社内容情報
移民が増えると私たちの生活はどう変わるか。雇用や賃金、経済成長や物価、貿易、税と社会保障、治安・文化まで経済学の視点で分析。
内容説明
すでに250万人の「移民」が暮らす日本。2018年末に入管法を改正し、さらなる外国人労働者の受け入れ拡大に舵を切った。移民が増えると、私たちの生活にどのような影響があるのか。本書は、雇用や賃金、経済成長や物価、貿易、税と社会保障、さらに科学技術、治安・文化に至るまで、主要な論点を網羅。経済学の研究成果をもとに分析することで、感情的な議論を超え、移民がもたらす「損」と「得」を明らかにする。
目次
序章 移民と日本の現在
第1章 雇用環境が悪化するのか
第2章 経済成長の救世主なのか
第3章 人手不足を救い、女性活躍を促進するのか
第4章 住宅・税・社会保障が崩壊するのか
第5章 イノベーションの起爆剤になるのか
第6章 治安が悪化し、社会不安を招くのか
終章 どんな社会を望むのか
著者等紹介
友原章典[トモハラアキノリ]
東京都生まれ。2002年、ジョンズ・ホプキンス大学大学院よりPh.D.(経済学)取得。世界銀行や米州開発銀行にてコンサルタントを経験。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)経営大学院エコノミスト、ピッツバーグ大学大学院客員助教授およびニューヨーク市立大学助教授等を経て、青山学院大学国際政治経済学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばたやん@かみがた
81
移民にまつわる雇用、生産性、人手不足解消、税金・社会保障さらに治安や伝染病など各論点を検証、受け入れ国における移民の経済的効果を見ていきます。一読して感じるのは、論者により様々な見解が出され、また国内の各集団に与える影響も大きく異なることです。例えば、研究者についてなら、この前紹介した慎重派のボージャスや積極派のピエリに至るまで名だたる研究者を紹介、見解が大きく分かれる背景には、前提となる仮定で大きく結果が変わるばかりでなく、やはり各研究者の政治的立場等があることが示唆されます。(1/5)2020/10/17
007 kazu
29
2019年刊。移民がもたらす経済的影響の研究を紹介。移民は市民の仕事を奪う?税・社会保障の負担が増える? 肯否のな影響もどれもはっきりしないのが実情で、当たり前の話、どの属性か?短・長期によってその影響はかわってくる。移民というとブルーワーカーをイメージしがちであるが実際には高技能の者もあり、そうした人には長期的にみて同国にて高い付加価値を与える可能性もある。(米国はその典型?)目から鱗であったのは、単純に労働力確保の意味で移民を受け入れると生産性向上のための投資を怠る可能性も示唆されており興味深い。 2024/04/10
おせきはん
20
学術研究の成果に基づき、移民受け入れの経済的な損得を多角的、客観的に論じています。移民受け入れに対するスタンスがそれぞれの人の置かれている環境により異なること、移民にとっても経済的な安定が重要であることなどを踏まえ、印象論や感情論に走らず、まずは国として目指す社会像と移民に期待する役割の明確化が必要であることを理解できました。2020/01/30
ステビア
16
さまざまなトピックに対する移民の影響を概説。経済学の中でも定説というものはまだあまりないようで、各論をきちんと併記しているところに誠実さを感じる。2020/03/28
CTC
14
1月の中公新書新刊。著者は青学国際政治経済学部教授。移民=「海外から来て、長期的に住んでいる人」と定義し、移民が「生活に与える影響について、経済学的に検証された結果を紹介することに集中」して記したもの(受け入れについての道義的な観点の議論はしない)。著者は「移民を専門的に研究する経済学者」だという事だが、かような専門家の書き物でこれほど平易で理解しやすく纏められた本は珍しいのではないか。優れた良書であると思う。移民問題ってのは働き方や人との関わり方を考える事でもあるから、多くの人に判り易くという事だろう。2020/04/10