出版社内容情報
肉声証言テープなどの新資料、国内外の研究成果をもとに、開戦へと向かった日本を徹底検証。列強の動きを読み違えた開戦前夜の真相。
日本人だけで300万人を超える死者を出した太平洋戦争。軍幹部ですら「負ける」と予想した戦争へ、日本はなぜ踏み込んでしまったのか――。当事者の肉声証言テープなど貴重な新資料と、国内外の最新の研究成果をもとに、壮大な疑問を徹底検証。列強の動きを読み違えた日本外交の“楽観”、新興ナチスドイツへの接近、陸軍中央の戦略なき人事・・・・・・今だからこそ見えてきた開戦までの道程。
内容説明
日本人だけで300万人を超える死者を出した太平洋戦争。軍幹部ですら「負ける」と予想した戦争へ、日本はなぜ踏み込んでしまったのか―。当事者の肉声証言テープなど貴重な新資料と、国内外の最新の研究成果をもとに、壮大な疑問を徹底検証。列強の動きを読み違えた日本外交の“楽観”、新興ナチスドイツへの接近、陸軍中央の戦略なき人事…今だからこそ見えてきた開戦までの道程。
目次
第1章 外交―世界を読み違えた日本(“外交敗戦”孤立への道;一九三〇年代日本を支配した空気;外交に活かせなかった陸軍暗号情報;変化していた世界帝国主義・遅れた日本の対応)
第2章 陸軍―戦略なき人事が国を滅ぼす(巨大組織“陸軍”暴走のメカニズム;陸軍を狂わせた人事システム;日本が陥った負の組織論;内向きの論理・日本陸軍の誤算)
陸軍暴走の連鎖
なぜ、日中戦争をとめられなかったのか
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
417
タイトル通り、日本人がなぜあの無謀な戦争に向かっていったのかを、新しい資料と研究者を動員して徹底検証しようとしたもの。本書はその第一部の「外交・陸軍篇」。まず外交に於いてだが、私はこれまで時の外相、松岡洋右が意気揚々と国際連盟を脱退したものだとばかり思っていたが、実際には彼は外交の失敗、敗北と捉えていたようだ。つまり、そんなはずではなかったのに日本は国際社会で孤立していったのである。そこに大きく横たわるのは「責任(者)の不在」だろう。そして陸軍もまた一枚岩からは程遠い。2.26の皇道派と統制派以前に⇒ 2021/04/19
yumiko
59
2011年NHKスペシャルで放映されたシリーズの文庫化。第一弾は外交・陸軍編。定まった国家戦略と大局観を持たず、希望的観測で外交的潮流を見誤った政府と、成果を競って暴走する出先機関を収拾できず、失敗をカバーするために新たな失敗を重ね事態を泥沼化させた陸軍。この一冊を読むかぎりでは、リーダー不在の政府と陸軍の無策と混乱に、なし崩し的に戦争になだれ込んだようにしか思えてならない。これでは戦争責任を問うにも、所在が曖昧にならざるを得ないはずだ。血圧の低い私だけれど、この一冊で血管が切れそうな程怒りがつのった。2015/08/20
ころりんぱ
54
徹底検証!と言うだけあってすごく細かい。陸軍の誰々がどこのポストにいてこう考えてこう行動した、その時外務省の誰々は別のところで全く別の事を画策していた…うん、難しい。国が戦争に突入するとき、皆がいっぺんに、よし、やろうぜって始まるんじゃなくて、出し抜けに事を起こす人らがいて、それを何とかしようと次から次へ事が起き、失敗しても次やったらいけるんじゃないか?みたいにまた穴埋めしようと、さらに…という、負け続けてもやり続けるギャンブラーの心理を引き合いに出していたのが印象に残った。まるでドミノ倒し。2015/09/11
へくとぱすかる
50
自分の都合のいいようにしか情報を解釈しなかったため、世界の情勢を読み誤り、まちがった選択を繰り返し、そして統率から外れた行動を、ルールがあるにもかかわらず容認してしまった無責任。それこそが戦争への道を進んでいった最大の理由なのだろう。意思決定からみたシステム上の欠陥が、緊急時に露呈し、的確な選択もできなかった。たとえそれが時代的な制約だとしても、これをやったら先方はどう思うか? という考え方も、あまりにも不足していたとしか思えない。戦後70年に、ようやくここまで分析できた、タイトルに示された疑問への解答。2015/07/21
たまきら
39
備忘録:読みながらくらくらするほどの既視感を覚えた。全員が手探りの状態なのに、最初はおずおずと、そして一気に「戦争」へと向かっていく。そこには対話の断絶があり、強烈なまでの自国愛と他の意見を軽視する風潮がある。くらくらするほどの既視感。そして、絶対気づいているだろうにそのことに向き合っていないNHK取材班…。現在と比較してほしいと強く感じた。ドキドキしながら下巻へ。2021/05/13