出版社内容情報
地下水の硝酸汚染の原因が、化学肥料の多施用や畜産廃棄物の土壌還元にあることをを窒素収支と流出機構から解明し、還元ゾーンとしての水田機能の重要性、土壌本来の機能を最大限に利用した環境にやさしい農法を提唱。
内容説明
環境の時代といわれる二一世紀を前に、昨年二月には農業生産には欠かせない成分である硝酸性窒素が環境基準に格上げされ、さらに七月には食料・農業・農村基本法が施行され、食料自給率の向上と環境により調和した持続性の高い農業生産方式への転換が強く求められるようになった。そこで、本書では地下水の硝酸汚染防止と循環型農業技術を開発するにあたっての基礎的な資料を提供することを目的に、耕地生態系の中における水の動きに添って地形的に高いところにある畑から低地の水田に至る窒素の動態を具体的な調査データを中心に整理した。すなわち、畑からの肥料窒素の流出量を、畑作地帯の地下水水質の実態調査およびモデル畑圃場における窒素成分の収支から明らかにするとともに、その流出機構の解析を試みた。また、水田が農業生態系における還元ゾーンとして窒素循環に果たす役割の大きさを指摘し、今後の土地利用のあり方にも触れた。さらに持続的な農業生産方式が普及・定着するための耕地における窒素循環の再生をめざした肥培管理技術の展開方向を提案した。
目次
第1章 農業と地下水の硝酸汚染
第2章 畑作地帯の地下水水質と窒素流出量
第3章 畑における肥料成分の動態と収支
第4章 畑における脱窒の可能性を探る
第5章 地形連鎖・土地利用連鎖における水田の役割
第6章 水田の窒素浄化容量
第7章 持続的農業生産へ向けての農法転換