出版社内容情報
科学の対象としての〈環境〉と、人も作物も生きる場としての〈風土〉とを峻別し、農家の技術を支える風土認識の復権を唱える。風土を映しだす作物の〈かたち〉とその内面に着目しつつ風土を創る技術の構造を追究。
内容説明
風土のもつ一つの側面は、地域の条件を映しだす仕組みとしての生態的均衡系である。そこには、特定の方向に変化しようとする力=作用と平衡に戻ろうとする自然の力が総合的に働いている。この定常的な開放系として働く作用をどうとらえ活かすか、そこに農耕技術の本質がある。しかし、近年の作物研究の趨勢はそのことを忘れ、環境を要素・要因に分解し作用との関係をみる思考が支配的になっている。そこには、要素間の関係以外に作物をとらえる術はなく、作物の主体的行動を風土の中にみる視点はない。
目次
第1章 “風土”と“環境”―その視座のちがいから農耕を考える
第2章 風土を映しだす作物の〈かたち〉
第3章 コンニャク自然生栽培は語る―風土認識の結晶
第4章 砂丘畑を垣間見て―風土をつくる技術とは
第5章 技術を構想する論理―汎技術と個別技術
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
里のフクロウ
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農学者としての著者が科学に基づく技術が耕地生態系の破壊を招いている現実に農学の在り方を問おうとするものである。問題としているのは自然現象に対する認識である。科学は分析的であり主格が我にあることからする限界がある。自然は総体であり、それをそれとして捉えることと主格を作物に置くことを提唱している。具体的は農業を風土の中に位置づけることと風土を通して作物の形を捉えることとしている。テーマは科学哲学に属することである。日本ではこの種議論は低調であると聞いている。ましてや農法に至っては稀有な議論であり貴重である。2017/09/17