出版社内容情報
イギリスの女兵士はなぜ日本軍捕虜の面前で全裸のまま平気でいられるのか、彼らはなぜ捕虜に家畜同様の食物を与えて平然としていられるのか。ビルマ英軍収容所に強制労働の日々を送った歴史家の鋭利な筆はたえず読者を驚かせ、微苦笑させながら、西欧という怪物の正体を暴露してゆく。激しい怒りとユーモアの見事な結合と、強烈な事実をもつ説得力のまえに、読者の西欧観は再出発をよぎなくされよう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
76
云十年ぶりにパラパラと読み直しました。ブ〇カスのブ〇カス所以が生々しく描写されているシーンは云十年経ってもやはりショッキングでした。時代は大きく変わりましたが、ブ〇カスに始まる欧米人の日本人やアジア人に対する潜在的視点を知るには絶好の著書ではないかと思います。2022/08/06
びす男
54
ビルマで終戦を迎え、その後現地の収容所に入れられた著者が自らの体験を綴った一冊。佐藤優がオススメしている帯が目に止まり、購入した。普段体験できないことを知ることができるという、読書の醍醐味が詰まった本だったと思う。客観性に拘ることなく一捕虜として感じたことが直截に書かれており、そのことがかえって読者に考える材料を提供していると言える。生殺与奪をかつての敵国に握られるという稀な環境、そこで見えたのは西洋人の根底的なメンタリティや、より普遍的に人間という存在の「おかしみ」のようなものだった。後で書評かきます。2015/01/30
James Hayashi
36
満洲後の強制収容の話はよく聞くが、ビルマの戦後に収容されたとはあまり聞かない。著者が主観的にいうと、世界で最も過酷であったという。食料が最低限にしか支給されず、ひもじい思いをされたようだが、倉庫からの窃盗は意外と簡単であったようで餓死は多くないと見た。Wikiによるとビルマでは1946年11月までの死者1,624人のうち、52%が労務に起因するという。この本からは労務の辛さはあまり感じられないので、疾病や傷害などの複合的な要因に起因するのでないかと想像する。続く→2018/06/06
あきあかね
29
『ビルマの竪琴』の映画では、月夜のビルマの村で、対峙する日本軍とイギリス軍が、お互いに「埴生の宿」の歌を合唱する場面が印象的だったが、この本はそうした感傷的なイメージとは対極に位置している。 著者は京都大学で西洋史を学んだ後、大学で研究を行っていたところ、27歳で応召され、ビルマ戦線に送られた。敗戦後、イギリス軍捕虜として1年9か月の間収容所で抑留された経験を綴ったのが本書である。 「西欧ヒューマニズムに対する日本人の意識を根底から揺さぶり、西欧観の再出発を余儀なくさせ」た本であると紹介されているように⇒2019/07/04
佐島楓
21
第二次大戦後に英国がビルマ(ミャンマー)に設置した収容所の体験談。家畜以下の扱いを受けた著者も、現地人に対しては差別的な目を向けている。結局人間というものは、差別することでしか自尊心を保てないのか。とても悲しかったが、それも極限状態でのひとつの現実、真実なのだろう。2013/11/13