内容説明
海を制するものは世界を制する。時代とともに範囲を広げた「七つの海」では、航路と交易のネットワークを支配した海洋国家が覇を唱え、世界史を塗り替えてきた。古くはローマ帝国、イスラーム帝国、モンゴル帝国、さらに15世紀の大航海時代を経てオランダ、大英帝国、アメリカ合衆国へ。長く続いた帆船の時代から、19世紀後半の蒸気船により高速化した近代まで、シー・パワーの視点から描くはじめての世界通史。
目次
第1章 西から拓かれたユーラシアの海―諸海域世界の時代
第2章 船乗りシンドバッドの時代―ユーラシアの海の一体化
第3章 中国が「海の帝国」だった時代―ユーラシアの海の全盛期
第4章 ヴァイキングと北方領域の開拓―北から拓ける海洋世界
第5章 大航海時代と拓かれる大西洋―オーシャン時代の開幕
第6章 ロビンソン・クルーソーとガリヴァーの時代―海の世界からの資本主義の勃興
第7章 大英帝国とエンパイア・ルート―世界の海を制したイギリス
第8章 やってきた本格的なオーシャン時代―海の世界のグローバリゼーション
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鯖
16
さらっと海からの世界史を眺めた通史。ロビンソンクルーソーやシンドバット、ガリバー等の小説をにも触れられて、興味をひく造り。平安時代、アフリカから中国までを股に掛けて交易していたイスラムが、日本のことを黄金と紹介していた話はやっぱり面白い。ワクワク(倭国)と名がいいよなあと思う。犬の首輪も黄金でできているとか、やたら具体的で、まあ、確かに黄金欲しくなって、日本まで攻めてきちゃう気持ちも分からなくもないような…。黄金ないです。2016/03/21
キムチ27
14
裏表紙に「シーパワーからみる世界通史」とあるのはいささか、大言壮語の感。とはいえ、数時間で読める「海から見た」世界史はなかなか面白かった。子供時分読んだ、「ロビンソン・クルーソー」「ガリバー旅行記」はメルヘン視点の読後だったが、世界征服の意図のもと、後日にもたらした影響を併せて考えると話が膨らむ。 今使われている世界海図は鄭和時代のそれということも驚き。航海図で見る宋・元・明での軌跡は壮大なスケールパワーを夢想。 地球号の碧い部分は、前史から大国の間で覇権をめぐり、ボールのようにパスされ続けてきたのだ。2013/11/17
雲をみるひと
9
海洋交流に焦点を当てた世界史。中世までの事実の羅列を中心とした記述に対し、近代は海が舞台の物語とその背景の分析が加わるように時代の濃淡が大きい。ロビンソンクルーソーやガリバー旅行記に関する記載は興味深く此れらに特化してもよかったかと思う。2019/04/27
白義
8
文明間の交流、貿易の拡大によって古代から開拓されてきた海の世界史を、西洋だけでなくイスラム、中華圏も含めて語る入門書。さまざまな人間の思惑が困難な海域を開拓し、どんどん文明が繋がり、その興亡に合わせて世界的なネットワークが組み替えられていく様子は図から想像するだけでも胸躍るものがある中華圏やイスラム圏の人々がアフリカにもその航海範囲を広げていたのは時代を考えると驚かされる。また、ニシン漁から商人国家オランダが覇権を手にするのに、西洋の海洋国家っぷりと資本主義のダイナミズムを思い知る2014/06/25
ピオリーヌ
7
海という視点から見た世界史通史の入門書として優れていると感じる。『銃・病原菌・鉄』でもあった記述だが、それまで海上帝国であった中国が海禁政策によりその力を喪ったという点が印象に残る。鄭和の航海を最後として、宋代以後続いてきた海の帝国の時代は幕を降ろした。また、大航海時代を準備した重大な案件として、1291年のモロッコ海軍の壊滅があげられている。イタリア人が勝利したようだが、この件については知識不足の為興味をそそられている。2019/08/09