出版社内容情報
日本民族に独自の美意識をあらわす語「いき(粋)」とは何かを、その構造と表現から明快に捉える。
内容説明
日本民族に独自の美意識をあらわす語「いき(粋)」とは何か。「運命によって“諦め”を得た“媚態”が“意気地”の自由に生きるのが“いき”である」―九鬼(1888‐1941)は「いき」の現象をその構造と表現から明快に把えてみせたあと、こう結論する。再評価の気運高い表題作に加え『風流に関する一考察』『情緒の系図』を併収。
目次
「いき」の構造
風流に関する一考察
情緒の系図
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
66
五感の齎す「さわり」による体感。身を晒した文化の中で、自然に育まれる意味体験。改めて感じたのは、言葉の深み。Native故の深み。日本人だなぁ、と感じる。(叱責されるのを覚悟で言えば)執着心を脱し垢抜けした無関心を、無意識に体現!?文字にしただけで難解極まりない。Coolな俳優は頭に浮かぶも、粋となるとなぁ・・・。(笑)本題とは外れますが、学問の楽しさ・難しさは如何に”形”と成すか、考察思考法の参考にもなりました。因みに、着物の縞柄の件、知りませんでした。(汗)2015/11/18
livre_film2020
41
「いき」とは、「媚態」「意気地」「諦め」で成り立つという。九鬼先生によれば曲線は粋ではない。であれば、扇が発達した理由やアルフォンスミュシャ等のアール・デコが日本人間でウケる理由がわからない……。扇には口元を隠すという用途があり、それ故に粋を形成すると言われたらそれまでだけれど……。九鬼自体花街通いで有名だったそう。趣味を追究しまくったんだろうな。抜き衣紋に関しては祖母によく言われるので私も体得しているのだろう。着物を着る時「もっと抜きなさい。それやと粋じゃないわ」って。今時は野暮なことが多いですね。2022/08/23
よこしま
40
「いき」とは何ぞや?と疑問を持っておりまして、この本を手にしてみました。正直、奥が深すぎて、今の自分では整理できないというのが見解です。このまま手ブラでレビューなしは、それもまた意気地がなしで。この『意気地』という言葉も、『媚態』や『諦め』と三位一体で、「いき」が成り立つ訳でして。媚態は、異性に対する不安定な、緊張した関係。意気地が自分への誇り、諦めが執着を断つこと。つまり恋愛なら成就しないギリギリの辺りが媚態であり、諦めの本質を示していると。と、まとめてみましたが自分が野暮にしか見えず、まだまだです。2015/01/26
ビイーン
32
日本人が持っている独特な感性の「いき」をヨーロッパ哲学の論法で分析した名著であった。特に建築上の「いき」について茶屋建築を引き合いに出して考察するところはとても興味をそそられる。西洋の思想をありがたがるより「いき」のような日本古来の感性の方がよっぽどよさそうだ。哲学なんて全く関心なかったが、これは何度も読みたくなる。2018/01/29
zirou1984
31
青空文庫で主論のみ読了。いきという日本的情緒について西洋哲学の概念を持って分析しそれを「垢抜けして張りのある色っぽさ」、つまり日本固有の道徳性(理想性)と非現実性とによって自己の存在を実現する媚態として定義し、そこから意気―野暮、上品―下品や派手―地味といった概念との関係性を構築する。個人的に「ダサい」という価値観について考える際の参考として読んでいたが、存在論的に示された「いき」に対し、「ダサい」はコードとの差異や関係性の文脈という恣意性以外にも、成熟という視点を持てることに気付けたのが収穫だった。2017/08/09